３．部会＜生徒指導部会＞
川合 正
（委員長あいさつ）
皆さまこんにちは。ただ今より生徒指導部会を開催いたします。私は当部会の委員長を務めさせていただきます。桜の聖母学院高等学校の伊達幸子と申します。部会は今日、明日の二部に分かれています。本日は川合正先生よりご講演いただきます。明日は９時から２名の先生より研究発表が行われます。２日間どうぞよろしくお願いいたします。
はじめに、当部会の講師の先生をご紹介いたします。全国中学高等学校京北学園白山高等学校の川合正先生でいらっしゃいます。先生は現在京北中学高等学校京北学園白山高等学校の学校長を務め、また同時に東洋大学文学部講師を務めていらっしゃいます。さらに東京私立教育研究所、学校教育相談研究会委員長、また全国商業高等学校校長会協会副理事長などを歴任されております。１９９９年には第４６回読売教育賞最優秀賞を受賞され、また先生の著作としては、「男の子がやる気になる子育て」など、教育関係の論文著書が多数ございます。
本日はご多忙のところご出席をいただき、ご講演ご指導いただけますこと、大変感謝しております。また司会は本校の荒賀久仁夫先生に務めていただきます、この機会を意義あるものにしたいと思いますので、先生方どうぞよろしくお願いいたします。
（司会）ただ今ご紹介いただきました、当部会の司会を務めさせていただきます、桜の聖母高等学校の荒賀と申します。どうぞ二日間よろしくお願いいたします。それではさっそくご講演をいただきたいと思います。川合先生よろしくお願いいたします。
みなさんこんにちは。今日は福島にきて非常に感動しています。皆さんがこんなに熱心にやっていらっしゃるということに対しての感動でもあります。今、日本中はですね、頑張ろう日本、頑張ろう東北、頑張ろう福島と、こう言っているんですけども、本当に頑張らなきゃいけないということは、肌で感じております。３月１１日以降ですね、本当に東京の学校も非常に大きな転換点を迎えている。今までの知識ではない、そうではなくして、しっかりと知恵を自分たちで考えて判断できる子供たちを育てなければいけないんだということを、皆さんと一緒に学べるチャンスがあったことを本当に幸せだと思っております。私は心理学なんかをやっていてですね、頑張れよという言葉ですね。頑張れば何かができるということはない、できると思うから子供たちは頑張れるんだというところを、やっぱりしっかりと抑えなきゃいけないんだろうと。子供たちに我々はやればできるんだというところを、しっかり示していくことが必要なんだろうと言う思いでですね、あちこち講演会で歩いているんですけどね、沖縄から九州回ってくるんですけど、来週から。ぜひそういうことを伝えていきたいなと思っています。
今日は、「今、教師に求められるコミュニケーション力、会話一つで、成績も性格も変わる」というタイトルにしました。私は３校の校長をやっているんですが、非常にこき使われているという感じがします。３校でやりながら、大学の方もいかなきゃいけない。大学の授業もありまして、大学の方の併設校でもありますので、非常に多くのことをやりたいと思いつつできない状態です。私自身は男子校なもんですから、男子校に偏るかもしれませんけども、ぜひ皆さんが現場にもって帰れるようなレジメを作りたいと思ったものですから、こんなレジメになりましたので、ぜひ今日のところで、自分が使えるなと思うところがあれば持って帰っていただいて、子供たちや先生方といろんな議論をしていただければなと、こういうふうに思っております。
▼教師とコミュニケーション
私自身はコミュニケーションというのが専門でもありますので、今日福島の駅の下に行きましたら、「男の子の育て方」という本が、ＰＨＰで今週出たんでしょうね、自分のものではあるんですが一冊買ってきました。この本は、小学校の子供たち、男の子を、どのようにしたらやる気にさせるのかということを書いています。こちらは中高の方ですので、もし興味がありましたら、ぜひそういうところでと思いますけども、今日はその話のエキスをという形で話をさせていただきたいと思います。
さて学校は今本当に大変だと思うんですけども、何ででしょうか。我々はコンビニ現象と言っています。コンビニ現象というのは、コンビニエンスストアで、千円の買い物をすると、千円の物がくるわけですよね。だからもし袋が破けていたり、欠陥商品であったら、我々は返しますよね。それが現在学校現場でも起こっているんですね。千円の月謝を払ったとしたら、千円の授業をしなければいけない。授業中にうるさいとか、または先生が自分の自慢ばかり話しているとか、そうなると、「返して下さい、お金を」「それは契約違反ですよ」みたいなことを言うので、コンビニ現象と言っています。また、ヘリコプターペアレンツとか、いろんなことも起こっています。我々はこれは当然出てくる問題であろうと考えていたわけですけども、この対応についても今日は話させていただきたいと思います。
説明責任として、説明責任の三段階と書きましたけども、特に私学ではしっかりやらないといけない。ある学校では、私の学校では東大に必ず入れますというようにいって宣伝してしまったら、東大に入らなかったら、親たちから総スカンをくってしまった。当たり前ですね、約束したんだから、そうしますと、やはり裏付けのある説明が今必要になってきていると思うんです。入学前というのは当然学校経営の基本方針や経営計画やオーガニズムを話していきますよね、それから計画は、授業参観や学校公開や、ホームページやメール発信や、学年通信、学級通信、学科通信、保護者会、学級懇親会などで、私学がかなり普段から評価されているわけですよね。評価されない学校には生徒は来ないわけですから、はっきりしているわけです。評価の結果として、成果と課題、改善点を指示していく、通知表や面談等、それから大学、語学実績、就職は結果につなぐということでしょうか。こういうふうに、以前とは大きく変わり、いまはこれが基本ですよね。
今学校教育活動がどうしてこうなってきたんだろうか、私はコンビニエンス現象といいましたけど、当然親の権利として出てくるんでしょうけれども、同時に医療についてのインフォームドコンセントと同じではないかと、セカンドオピニオンと同次元のものではないかというふうに言いました。教師は教師になったら、一生教師であるという甘さがありましたよね。医者が医者になって、一生医者ではないんですね。新しいものを入れながらやっていった筈ですよね。その他の企業もほとんどがそうであったけども、教師だけが別次元だった。聖職という言葉によって、我々は一回もらった免許が一生使える。評価も曖昧性があったわけですよね。免許更新制がいつなくなるかと思って期待してましたけども、どうもなくならなかったので大変ですね。今年も私は免許更新であちこちに行きます。本当に２日間３０時間やって意味があるのかとも思います。もうちょっと免許更新制は見直さなければいけないのではと。しかしこれも、インフォームドコンセプトと同じですよね。教員たちも子供たちの命を預かるんだから、しっかりと勉強しようじゃないか。そして新しいのを入れなきゃいけないじゃないかということなんでしょうか。
それから子供や保護者と学校の間の信頼関係という面ではですね、もう幻想であるということになりました。昔は学校の先生というのは、尊敬されていたんですよ。私の父も教師だったんですけども、本当に尊敬されていました。いい授業やったかどうかわかりませんよ。だけど家は百姓をやっていたんですけども、もう田植えになると生徒たちがきて田植えをしてました。先生の家を手伝うわけですよね。先生っていいなと思って、僕も間違って教師になりましたら、全然そんなことなかったですね。その頃は家にきて、ご飯食べて帰るぐらいの生徒ばかりでした。あの頃は本当に山の木を切ったりね、たきぎを作ったりしてました。私の子供の頃は。
そんなことを考えると、大きく変わってしまったんだなと思います。信頼関係は、今や学校と子供、保護者、学校評議員や、地域委員などで、改めて築きあげていくものです。これが現実です。生徒指導においても、この視点を無くしたときに、いっぺんにダメなりますよね。コミュニケーションでしっかり取り戻そうよということを、私はあちこちでお話ししているんですけども、本当に言葉一つで連帯ができていくならいいですよね。なかなか難しいです。私は校長をやっているんで、大変になって、最後は私のところに回ってくるんです。「校長先生、どうしようもないから助けて下さい」といって、校長室におっぽりなげていくんですよね、親を。一時間位ウワーとしゃべりますよね。そして最後に終わったところで、「ああなるほどそうだったんですか。ところで今一番望んでいらっしゃるのは何なんですか」というと、「あの先生辞めさせて下さい」「あの先生辞めさせてほしいわけですよね。それで学校ではそういうことをできるとお考えでしょうか」というと、「それはできないと思います」「ああそうですか、ありがとうございます。ではどうすればいいんですか」、というように。
会話、コミュニケーションをどう持っていくか、というのは、校長にとって一番大変な仕事かなと思います。ある時は警備員が飛んできて、先生変な人がうちの事務所の前で寝ているんです。出ていってくれないんです。警察呼ぶかというから、呼べというんです。どうすりゃいいんですかと言うんです。校長、来て下さい。そんなよっぱらいまで僕は追い出すのかと思いましてね。「あらあらどうしたんですか」「気持ちいいんだ」「気持ちいいんですか、いいですね、でも学校そろそろ門を閉めるんですけどもどうすればいいですか」「もう少し寝かせろよ」「あと何分位でいいんですか」「５分だ、５分だけ寝かせろ」「ああそうですか、じゃあ５分待ちますね。警備員さん５分経ったら起こして下さいね。そうしないと困りますからね」というと、わかっているよとやっているわけですね。そして行ったらやぱり５分で出ていきましたね。５分経ちましたから出ていって下さいねというんじゃないんですよ。５分経ちました、約束ですよと言ったら、ハイといって出ていったんですよね。こういうのって、会話ですよね。
でもこの頃は生徒によっては違いますよね。皆さんどうですか。子供は個々を大切にするって、どこの学校でも言っていますけども、個々の生徒を大事にするって、果たしてできるんですかね。４０人ものクラスの個々の生徒を大事にした授業なんて。「先生わかりません」ってある子が言うけど、こっちは「先生早く進んで下さい」。個々の生徒を育てるということは、授業という場面では、多分無理でしょう。画一的な授業が必要なんでしょう。我々はそこを知っていて、個々を大切にするということは、何かというようにいかないと、若い先生が迷っているんですね。生徒は皆大切にしようと校長先生がおっしゃったんでやっていたら、教室ガタガタになっちゃいましたってね、おとといその先生を呼んで面接をしたんですよね。ちょっとまずいよ、距離感おかしいよと言ったんですけども。
▼生徒に合わせた対応
今日は小出監督の例を一つあげてみました。皆さんご存じですね。千葉県の農業高校を出まして、地元にきまして駅伝をやっていらして、陸上部の監督をして、かなりその学校が駅伝で成果を出したところで、企業に引き抜かれてやっていって、そして有森裕子との出会いがあるわけですよね。リクルートに勤めてられたんですね、そして有森裕子が、リクルートの門をたたくんです。先生弟子にして下さい。実績見ると高校時代に中距離走で全然優勝していないんですね、レベルの低い生徒なんですね。たぶん戦力になんないなと思ったけど、まあいいかマネージャーにでも使ってやるよといって、入部を許したんですね。そして彼女を育てるんだけども、ちょっと読んでみましょうか。
「有森裕子は、これやれというと反発してくる選手だった。彼女は気持ちよくそして目が輝くように指導方法を変えた。遅かった彼女に夢と希望を持たせるようにした」と書いてあるんですね。反発に線を引きましょうか。夢と希望がキーワードですね。教室の中にもいるじゃないですか、学校には必ず反抗する生徒がいる。なんでですか、なんで先生そんな規則あるんですか。どうしてスカートの丈が短くてダメなんですかといって、反抗する。この子は別に成績悪い子も一緒なわけですよ。そんなこと言っていないで勉強やれよ。そんな格好しているから勉強できないんだろうと、言いたくなるような子たちが反抗してくる。それが有森裕子だったんです。その時に小出監督は、夢や希望、未来に目を向けていったんですね。ここはすごいですね。これ本当に重要です。昔ガングロがはやったころ、私はガングロ落としの名人と言われたんですね。「川合先生うちのガングロと面接して」と言われるんですけども、行ってみたら、すごいガングロ。真っ白で目がよく見えなくて、目はここにあるのかという感じです。話し始めると、「３年にはどうなっているんだそのガングロ」「何言ってんですか先生、高校卒業して、大学に行ったら、ガングロになんかしませんよ」「へえ。何で？」「格好悪いですよ。大人になってまでこんな真っ黒にすんの」「ああそうなんだ、大学に行ったらガングロとっちゃうのか、もったいないね」と話をしていると、こう彼女は言うわけですよね。「だから高校３年生の２学期位にはやめるのかなと思っています」「ああそうなんだ、面接があるから大学の」。大学の面接は落ちるぞというと、当然でしょうとこういうわけです、彼女がね。「じゃあさ、２学期また会いに来るわ」といって帰るわけですね。そうすると担任から電話きて、先生何やったんですか、３年生になったらガングロやめちゃいましたよ。何があったんでしょうね、僕にもわかりません。未来を自分で見たんですよ、この反抗するガングロの子は。
ガングロ知ってますか。はやったんですよ。大変だったんです、学校も。でも未来を見せたら、３年生が大学入試迫ったときに、自分でおとしてしまったんですね。そういう例もありました。反発する子には未来を見せればいい。
有森裕子はバルセロナで銀メダルですよ。そしてその次のオリンピックでは、銅メダルとったんです。あの時のインタビュー覚えています。二大会連続でメダルですねとアナウンサーが聞いたんです。「私は私を褒めてあげたい」と言ったんですよ。皆日本人はふざけんなと思った。ふざけんなよ、監督のお陰でしょう。周りの人に支えられてというのが、普通常識じゃないですか。あそこでのスピーチは、なのに自分で自分を褒めてあげたい。頑張った私を。これが反発する子の特長ですね。だから銀メダルと銅メダル取れたんですね。
話を聞いて納得して、非常に優秀な天才少女、鈴木博美が預けられるんですね、小出監督に。この時にリクルートから積水に変わったところかもしれませんね、ちょっといまわかりませんけども。鈴木博美という天才少女を預かるんです。日本中が注目していました。中学も、高校のインターハイでほとんど優勝していたんですね、中距離は。そういうことで期待された鈴木博美を、これを世界一にしようという発想でやったんですね。ちょっと読んでみましょうか。
「鈴木博美は、すごく頑固だった。走ることに素質があるのに、どうしたらいいかなと私が悩んだことは、彼女はやる気を失っていた時期もあった。そこで私はお友達としてこれをやるのでなく、どっちにするかと、相談を持ちかけることにした。すると彼女は素直になっていった。
これクラスに天才少女いるでしょう。頭がいいんです。天才少年、東大に入るような子が教室にいるわけですよ。教えていると、先生教え方下手ですとか言うわけです。そんなの分かり切っていますよと言うわけです。頑固だから。先生の教え方全然聞かないんですね。僕は国語の教師だったので、「上二段活用はなこれだけだからすぐ覚えられるだろう」と教えたら、「先生くだんないよ」と、前でポツンと言うんですよ。ムカっとするんですよ。せっかくいい覚え方教えると、「駿台予備校ではそんな教え方しません。もっと意味をしっかり教えなきゃ先生だめだよ」。頑固というか、生意気でカチンカチンくるわけですよ。下手だというんですよ、教師が。「悪いけどさ、その教え方教えて、さあみんな聞けよ」。そして説明させてみると、うまいんですよ、その天才少年ね。そういうのがありました。
ここで鈴木博美に対して、そういうときにはどうするかというと、相手の力を使う。頑固な子ですね、天才だから。自分の勉強の力で大丈夫だと。変な手をいれないほうがいい。そこで小出監督は友達になった。そして友達として声援を送るのです。「博美、きょうはどうだ、走り」「ちょっと調子おかしいんです」「どうして」「ちょっと右足の蹴りが遅い気がするんです」「どうしたんだ」「ちょっと筋トレの時に左足の方が」とベラベラしゃべるんですよ、本人が。「なるほどそうか、右足じゃあどうすればいいんだ」「もうちょっと重りを重くした方がいいと思うんです」「そうか、やってみろ」。ずうっとあとは専門的なことで注意していくのですが、これはコーチングですよね、相手の力を使っていく。
メンターというのわかります。仲間。仲間になっちゃう。そして相手の力を使っていくわけですよね。これすごいですね。この力は。メンタリングだったら、伴走者ですよね。マラソンするときに目の見えない人の横に立って、一緒に走る人、伴走者、あれはメンターですね。外れそうになったとき紐をひっぱるだけいい。普通はたるんでいるんです。二人の間は。相手の力で走っているんですけども、そういうのがメンターです。だけどメンターがコーチの一番いい例ですよね。
北島康介のコーチは平井さんといいます。うちの水泳部の面倒見てもらってます。東洋大学で５０ｍで練習しているんだけど、北島康介は自分なりに動きますよね。だから「どうだ」って聞いて、適切な助言をしていく。難しいですねコーチは。
小出監督すごいじゃないですか。ぜひこれ覚えておいてほしいですね。頑固な子にはメンタリングを、メンタリングとかコーチングというのは、皆さんすぐに身につきます。だって普段やっているから。寄り添うという方法でやっているのが、これですよ。
もう一人高橋尚子という、すごいまじめな子が出てきたわけですが、これが難しかったらしいですね。すぐに壊れちゃうというんです、真面目すぎて。走れといったらやめろというまで走っちゃう。監督に言われるから必死です。皆さんのクラスにもいるじゃないですか、宿題やってこいというと、絶対やってくると。当たり前なんですけども、あれ皆素直なんですよ。どうして疑わないの。どうして先生が宿題やれといったら、徹夜でやってくるの。おかしい。あれは先生に逆らうことができないんですね。高橋尚子もそうだった。ちょっと読んでみましょうか。
「高橋尚子はハイハイと素直に答える選手だ。いわゆる先生と生徒の関係みたいなものだ。彼女に頑張れと言ったことはない。頑張っている選手には、いいねとか送るだけでよい」
褒めるんですね。「子供は褒めれば伸びる」という本が、かなり売れたんです。２万も３万も売れたんですね。皆本買って読んだんだけど、伸びなかったんです、自分の子供。褒め方下手なんですね。それで失敗した。有森裕子褒めてどうしようもないでしょう。「裕子いいね」「何がですか」と言われそうです。鈴木博美に、「すごいね完璧な走りだよ」というと、「何言ってんですか先生」といいそうじゃないですか。皆さんのクラスにもいるんじゃないですか。９５点とったんで「立派だね９５点」「何言ってんですか５点間違ったんですよ、悔しいですよ」という子いるんですよね。褒めていいのは、本当に素直に、その先生を信頼している子ですよ。親を信頼している子は褒めていいですよね。あの先生褒めてた。小出先生の褒め方知っています。キューちゃん足首キューットしまっていいね、世界一の足首だよ。キューちゃんの走り方いいね、背中ピーットなってて、それは世界一の走りの走り方だよと言われているんだからね。そして自分は酒飲んで、俺はまた酔っ払っちゃったよと言ってやっているんですよ。そこがプロなんですね。
単純ですけどもこの３人でいくと、１人が反抗、反発する子。学校にはあんまりはいないですよね。だけど中にはいるじゃないですか。そして、非常に天才で頑固な子がいる。自分のやり方を変えない、何言ってんだ先生は、俺やっていいって言ってるんだからやれというんですよ。私のやり方でやりますというんです。そして満点とっちゃうわけだから。試験で日本一なんてとっちゃうから、その先生越えているわけですよ。そんなことがあります。そして素直な子がいるわけですね。これがほとんどです。この反発した有森裕子はバルセロナ、銀、銅、頑固な鈴木博美は世界陸上、アテネで金メダルですね。素直な尚子さんはシドニーで金メダル。そのあとも世界の女子の最高記録をマークしたんですね。そのあと、オリンピック選考だったんだけど、失速しちゃうんですね。そして２７分を越えてゴールしたんです。インタビューアーが、尚子さん２７分越えられませんでしたねといったら、やっちゃいましたと言います。すると、隣から小出監督が顔を出して、私の責任ですと言ったんです。何今までほったらかしていたと思ったら、私の責任だと。あの時実は頑張れとやっちゃったんですね。その時おにぎり一つ多く食べたというんじゃないですか。そのせいで失速したんですね。
そのあと小出監督と高橋尚子は別れるじゃないですか。別れてから、高橋尚子は自分でどんどんやるんで、疲労骨折とか、いろんな調子が悪くなりましたね。もちろんすごい選手ですけどね。こんなことを考えると、皆さんどうですかね。反発する子には夢を持たせる。ヒントがありそうですね。頑固な子には友達になる。メンターって書いた方がいいかもしれませんね。コーチングはちょっと古くなっちゃいましたんでね。コーチングというのは、かなり技巧的です。メンタ―だったらまだ寄り添うという感じが強いですね。メンターというのは仲間。それから素直な子には褒めるとなりましたが、こういうことを考えると、我々の教育には、絶対にいかす可能性がでてきますよね。
小出監督の話が多くなったように思いますけれども、今の駅伝選手のほとんどは、有名な人は千葉へ行って練習していますね。一時小出監督についてますよね。いろんな駅伝チームは、優秀選手は。そう考えますと、すごいんですね小出監督って。彼自身が速かったというか、コーチとしてすごいんですね。そんなことを考えるんですね。参考にと思いますけども、３人以外もいるでしょうけど、そこは相手を見ていくということは、こういうことなんだなと思わされる例でした。
▼子どもの成長段階と親の役割
皆さんの目の前の子どもたちが成長しますよね。最近この成長段階をしっかり見えない先生が出てきた。親もそうなんですけども。普通子供たちは３歳までは肌を離さないと言われます。これは重要なことで、愛着表現がある子は本当に安定感がでてくる。ところが最近の親は、愛着でなくて、うるさいと言ってなげちゃう。いろんな問題は、ひょっとしたら、子育ての３歳までの愛着がおかしくなってきている可能性がある。
そして７歳までは手を離さない。これは躾といいます。３歳～７歳までは親は躾をしなければいけない。だからすぐ飛び出したら、危ないダメ飛び出したらというふうに、大きな声で注意する。親は当然。そして何かいたずらしたら、ダメってやるでしょう。これは手を離さないで、手を抜いてないよね。躾をするわけですよね。この時にやってないと大変なことが今小学校１年に起こっています。小１プロブレムと言います。最近の小学校の先生は皆ノイローゼになっている。小１プロブレム、小１問題、小学校に入ってきた子供たちは、授業中でも歩くと。先生といってよってくると、誰かに質問すると、僕も僕もといって寄ってくる。秩序が保てないんですよ、躾がないから。人が話している時は黙って聞くとか。授業中は黙っていなきゃいけないとか、躾がされてないですね。これは７歳までですね。
そうすると１３歳まで、これからが難しい。目を離さない時期です。社会規範といっています僕は。社会規範を教えるのが１３歳まで。なぜといったら、７歳以降は友達と遊びだします。すると親から離れはじめます。その時に親が手をつなぐと、いや、お母さん嫌いとくるんですね。だから７歳、小学校の３年４年位は友達中心で、「お母さん黙ってて、友達のことは」と言う。これは目を離さないで、しっかり注意をする。例えば家に必要ないもの、お金が高くかかるようなものが、家においてある。どうしたの。朝起きたら言うよね。友達と一緒に店から持ってきた、万引きです。こんなことが起こるかもしれない。もっとありますよね、いろんな例がね。ボタンがとれている。学校へいく服が破れている。お母さんの財布から千円を持って行っちゃった。この時にお母さんはしっかり自分のお金を勘定していて、「どうしてなくなったの」「あなた持っていったの」「どうしたの」と、目を離さないで言わなきゃいけない。目を離してしまうと、子供たちはもう大人なんだと思ってしまうと、えらいことが起こってくる。これが７歳から１３歳です。
１３歳中２、皆さんが教えているところから先はもっと難しいですね。１９歳までは心を離さない。貴方の事を信頼しているわよ。夜１０時に帰ってくる。こういう時に、ガーンと問い詰めたらダメです。信頼感がある。あら遅かったのね、お母さん心配してたわと、Ｉメッセージを送る。
これがコミュニケーションの勉強が必要ですね。Ｉメッセージというのをどこかで出していきましょう。例えば家に帰ってきた娘に、どうします皆さんだったら。自分の娘が１１時に家に帰ってきた。連絡もなく、携帯電話も連絡もなく。お母さんハラハラドキドキして待っていました玄関で。ガチャンと開けてただ今と帰ってきました。娘ですよ。１１時ですよ。「何やっているのあんたは、こんなに遅くまで」と言ってみたいよね。ＹＯＵメッセージ、あなたはどうしてこうなの、あなたメッセージ、ＹＯＵメッセージといいます。これやったら子供は「うるさいわよ」といってガチャンと締めて自分の部屋に行っちゃう。そしてお腹すいているのに下りてこない。そのまま寝ちゃう。制服きたままで。これはＹＯＵメッセージだからです。あなたはどうしてこうなの。あなたはいつもそうね。どうして電話一本できないの。これぜんぶＹＯＵメッセージです。そうじゃなくてＩメッセージ。私はを使う。「ああよかったお母さん心配していたのよ。帰ってきてお母さんほっとしたわ」「ごめんお母さん遅くなって電話できなくて、電池切れちゃって」「電池切れたから電話できなかったの、それで」というと、｢友達がねお母さんと喧嘩して家でちゃって今その公園でずうっと話してたの｣「何々ちゃんどうしたの」「家に帰るっていうから家に送っていった」｢あなたって偉いわね｣となるかもしれない。これＩメッセージだから出てくる言葉ですね。
今日はコミュニケーションについて話しています。皆さんの中にも、生徒指導をされる方が多いと思うので、Ｉメッセージ、これはものすごく重要ですね。全然違ったでしょう。その１１時に帰ってきた娘。ガチャンといって二階に行って、ふてくされて意味がありますか。ないね。それよりも実はと話しはじめた方が、コミュニケーションあった方がいいよね。ベネッセの、家庭で会話がある方の子供が、コミュニケーションを取れる子供が、学力でも将来の就職に際しても、非常に高い目的意識を持っているとでたんですね。当たり前ですよね。親とコミュニケーションとれていた方が、勉強ができるし、そして高い将来の目標を持つ。当たり前のことだけど、ちょっとメモしていた方がいいかもしれませんね。だから家庭でのコミュニケーションを復活させることも、かなり僕は１５年位やってきているんですけども、今日はそのノウハウをもう少し話せればなと思っています。
そんなことでですね、皆さん１９歳になったら、子供はちゃんと恋人作ってきます。２０歳になったらやっぱり成人ですね。心配しなくていいでしょうあとはね。
一番始めが愛着でしょう。二番目が躾、三番目に社会規範、そして四番目が１９歳のときは、信頼という言葉を使っています。信頼になるわけです。自分が育ててきた子供。でも、どこかでおかしいかもしれない。すなわち３歳までで虐待していたかもしれない。この子危ないよ。しっかり躾やってないかもしれない。相手を信頼しないかもしれない。僕はいつも言っているんですよ。「お母さん自分の子供だから信頼していますよね。可能性があると思っていらっしゃいますよね」「冗談じゃないですよ先生、お父さんの子ですよ」。それじゃあねと思っちゃうじゃないですか。
子供は発達するという当たり前の話であるわけですけど、中学校位からいってみましょうか。７歳以降をギャングと言います。今日メモにいれなかったんですけども、これをチャムと言いますね。それからピュアといいます。これが皆さんが扱う中学生、小学校から中学校１年まで、これが中学校の後半、中２ぐらいから。男の子専門なので、女の子はもうちょっと早いですね。チャムね。ピュアというのは高校以来。ギャングというのは、友達と組んでいろんな行動をするんですね。悪さしたり、ボランティアしたり、いろんなことをやるギャング期。友達が全てです。これも小学校の子供たち、７歳以降の子供たちは友達が中心になります。ああ楽しそうね。何の話してたの。お母さん関係ないでしょうとくるんですね。これが始まってきますね。友達のことは僕に任せておいてよ。友達ができたんだ。いっぱい。何人位。５０人。なんで。クラス全員。自分と行動を同じにする人間は、全部友達。いいですね、小学校の時は夢があって。ところがこのチャム、これは仲よしグループといいます。女の子に多くてチャムが生まれたのはここですね。それは何かと言うと、チャムは仲よしという意味ですから、自分の仲間と言葉を通じて知り合った。言葉を通じて知り合った。だから言葉を相手に送らないと一人だけ外されますね。一人だけにメールを送らないと、その共通認識がないわけです一人が。あなただけ知らないの。皆知っているよねと一人だけはずされちゃう。昨日楽しかったわねと言っていますよ。あらあら何の話私にも教えて。あんた関係ないでしょと言われたら、きついでしょうこれ。特に友達が中心のこの年代。男だったら中学校２年３年だけど、女の子は小学校６年から始まるかもしれません。早いもんね。これがチャムという恐ろしいグループ集団。これが経験してないと、将来会社に進んでもやるからね。これは経験した方がいいですね。ギャングもね。ピュアというのは仲間ですからね、これは高校時代です。鉄道すきな子は鉄道すきな子同士で、すげえなお前の写真といってやっているんです。何か変なの映っている。車輪が映っていただけですげえなとやっている。他の子は全然無視しちゃうよね。英語好きな子は英語で話したり、日本史好きな子は日本史で問題出し合って、知らねえのかよ。ちくしょう今度こそは俺が勝つぞと思っている。ピュアです。子供のうちは一緒にやるじゃないですか。ギャングの時は友達ができたといって喜ぶ。チャムというのは、自分で仲間というものの距離感を測っているんです。距離感、こういうときは下がろう。こういうときは前へ出よう。この時が一番きついですね。いじめとか不登校が多くなる。ギャングエイジ、チャムエイジ、ピュアエイジと言います。
こういうことを考えると、我々が扱うのは、このチャムからギャング一部ありますね。これが中１ぐらいです。例えばこんなのあるんです。「今日の黒板きれいだね。誰消したの」「はい」「ありがとう、黒板きれいだと授業がやりやすいし、先生うれしいよ」と言うと、次の日から毎日黒板消すね、その子は。｢先生消しておいたから｣「ありがとう。また君が消したの」にこにこしながら、先生の喜びを歓心を買おうとする。ギャング期が残っているんですね。これは相互的関係というんです。相互的というのは、いいですね、ここまでは。これが中１にあるんだから、相互的関係のときは、幸せですよ、教師も。でも、中２ぐらいから反抗するでしょうね。誰か今日は黒板消してくれて。日直ですから。ありがとう。また黒板消してくれる。日直回ってきたら。どうしてニコっとしてお世辞の一つも言えないのかと思うけれでも、しょうがないんだね。対照的に変わっちゃうんだね。チャムから。これが教師の悩みですね。どうしてあんなにニコニコして、先生のことをやってくれた、掃除やってくれたと思っていたら、中２位からはさぼっちゃっているとか、そんなことが起こって、親や教師の一方的な価値観の押しつけに、わけもなく反発する。怒りがでるんですね。これ思春期の重要なとこですからね。皆さん経験あるでしょう。中２になるときに、お母さんが何か言うと、何かパーンとやりたくなった。親離れの始まりですよね。相互的関係はだから、親が喜べば子供も喜ぶ、子供が喜べばお母さんはますます喜ぶ。この時は赤ちゃんのときにあったよね。赤ちゃんが笑うので、かわいいのでこっちもニコニコとする。向こうもニコニコと返してくれる。ますます嬉しくなって、抱いてギャギャ喜んじゃう。ギャギャ喜んで、ますます父親としては嬉しくなっちゃうというのがありましたから、あれが相互的ですね。親が喜べば子供も喜ぶ。子供が喜んで親ますます子供に愛情を注いでいく。良かったですよね。それがなくなっていくんだから。親離れしていくんだから、当然なくなるんですよね。
▼短歌に表れた生徒の成長過程
うちの生徒が短歌を載せましたので、ちょっとそこらを実証しましょう。うちの生徒の短歌を読むと、皆さんも実感できるでしょう。実感できたらそれを使っていくと、かなりはっきりと言えるので、僕の方法としては、この短歌でいきましょうか。
「本を読め 勉強をしろ 母が言う ああうるさいな この夏休み」
いいですね。中１ですからね。お母さんの言葉が耳に入っています。本を読め、勉強しろという言葉が入っているから、お母さんの言うこと聞いてますねまだ。完全に反発じゃないですね。
「『今年こそ 期待してる』と 母の声 終わりも同じ 『どうするつもり？』」
これ夏休み宿題出すから、夏休みの題多いんですね。これわかるでしょう。これ完全に自分もあせっていますね。宿題やらなくちゃ。終わっちゃうんだとあせってますよ。最後に泣きながら徹夜して宿題やるんですよこの子たち。中１だからですよ。ところが中２になったら変わります。
「宿題の 仕上がり気にするわが母の 声によく似る つくつくぼうし」
ああ秋が来たな。夏休み終わりか。客観的に考えている。お母さんいなくなっちゃたでしょう。つくつくぼうしだもの。本を読めとか勉強しろという言葉じゃないんだもの。これすごいことじゃない。すごい成長ですよ、これ。だからこの時は本当に難しいです。
「夏の夜 宿題せよと母の声 分かっているよ 背を向けている」
やりましたね、反発ですね。この時お母さん、「うちの成長したわ」とは思わないよね。分かっているならやればいいでしょう。やらないからお母さん言っているでしょう。あんたのためでしょうと言いたくなるくらい。うるせんだよとガチャンとドア締めて自分の部屋にいっちゃう。またうるせんだよ、くそババアとかいいながら、上にいっちゃう。あんなにかわいかったんだよ。お母ちゃんと言っていたのに、急に変わっちゃう。ああ学校が悪かった。友達悪いんだ。担任が悪いんだと思うわけですよ。そして部屋にいくわけですよ。開けなさい開けなさい。何さっきの言葉は。どうしてあんたあんな言葉使うの。こういうメッセージ送りたいじゃないですか。出てけよ、俺の部屋だよと言うんだよ。何言ってんの。あんたの部屋じゃないでしょう。お父さんとお母さんが苦労して作った家だよ。あんたこそ出て行きなさい。こうやって子供のけますから、辞書がバーンと飛んでくる。下手すると胸に当たって肋骨折っちゃう。ちょっと突き飛ばされて怪我をする。こういうの皆さん見たことないですか。僕あるんです何度も、こういうお母さん方。それではっきりとしますけども、これ難しいですね、ここ。これが中２の醍醐味ですよ。我々は親と話すときの醍醐味ですね。これはもう生徒指導の一番重要なところです。お母さん守らなきゃいけない。怪我をしちゃう。東京の方だと先生が怪我をしたりするんです。それ全部このパターン。一番いい先生、面倒見のいい先生が怪我をするんですよ。皆さん生徒指導の恐い先生怪我しませんから。本当に面倒見るやさしい先生が怪我をするんですよ。あれなんでだって、お母さんと一緒ですよね。子供はこのようにして、自分の部屋にこもりました。お母さんはむかっとして、追っていくんですけども、お母さんはここにいるわけですね。入っていって言うわけです。何あんた今の言葉。そして何あの態度、背中向けて言わないで、目を見て言いなさいよというわけですよ。そうするとうるせんだよ、出てけよ。トラブルが起こっていますねここで。反発ですね。
黒磯の事件もそうでしたね。大分古いです
けど、皆さん覚えてないですかね。女の先生が生徒に刺された事件。あれ遅刻してきて、そして廊下に出て、ダメでしょう遅刻したらと言って、向こうが果物ナイフ出したんです。そしたら寄るなよと言ったら、先生は「自分が一番信頼されている先生だから、私のこと刺すわけない」と思って一歩前に出たわけです。そしたら刺すつもりじゃなかったんだけど刺されちゃった。
東京の女子高校でもあったんですね。３時間目遅刻してきた子を注意したんですね、先生が。「どうしたの遅刻して、ダメでしょう」と言って、前に来た時に、黒板に向かった瞬間に後ろから、バーっと走ってきて刺したの、高１の女の子がね。止めたんだけど、そしたら手に穴が空いた。そういうことが起こりました。なんでやったのか。３時間目にその子は、一番好きな先生だから学校に来たんですね。一番好きな先生だから来たのに、遅刻はダメでしょうと言われたんで、カッとしてわかんなくなっちゃった。プライベートゾーンとかプライベートサークルという言葉がある。子供たちがプライベートサークルに入るときには、危ないですよ。その時は近寄っちゃいけないんですよ。狂犬が唸っているときは入らないでしょう。しっぽを振った時に入るんですよ。当たり前のことです。動物と人間は違うと思っているんだけど、人間も同じなんですよ。危ないんです。
この年齢の時に手を離すけども、そう簡単ではない。一時手を離すけど、子供がぐれるんですよ。その時にどうする。何さっきの言葉って言って蒸し返す。この時に蒸し返しちゃダメなんですよ。例えば「何さっきの言葉、あんな言葉いう子にご飯なんかあげませんよ」と言ったら、「そうかよ」といって出て行っちゃう。ぶつかったら外へ行っちゃう。そしてコンビニデビューしちゃう。
コンビニでは疑似家族に会い行くんです。コンビニの前でたむろしているお兄ちゃんたちが、「どうしたんだしょげて」「お母さんと喧嘩した」「皆喧嘩したよ。パンでも食べろよ」と、お兄ちゃんが言う。そうするとうまいんですよそのぐちゃぐちゃのパンが。そしてお兄ちゃんについていっちゃう。これ疑似家族という。家族が気に入らなかったら、疑似家族にいくしかないでしょう。疑似家族といって、不良になる一番多い形ですね。結局はお兄ちゃんたちが「タバコ吸えよ。大丈夫、大人なんだから、母ちゃんと喧嘩したらもう大人さ」といって、悪さする。それについて行って、自転車盗んで、交番から電話がくる。そういうことも起こってくる。万引きするとき、「お前見張っておけ」と、立たせるだけど。こういうことが起こってくるので、非常に危険ですね。
どうすればいいのでしょう。もう一度いきますね。いったんはぶつかって部屋に入ったけど、「お母ちゃんお腹すいた」と出てくるわけです。その時はですね。「あらあら、赤ちゃんね、今日はあなたの好きなハンバーグよ」とでも言ってくれりゃいいんですよ、お母さん。でも難しいよね、さっき怒ったばかりだから。一時間で切り替えられますか。切り替えなきゃいけないです。ここが難しいです。
心理学用語では、子供帰りを退行といいます。必ず子供帰りという時期があります。子供たちはこのようにして、反発したり、退行したり、繰り返してどんどん大人になっていく。皆さんもおわかりになるでしょう。これを成長というんです。これがわからないとやはり、きついですね。これが自立していくということです。
女の人はここで成長して、自立して、すうっと自分が家庭を持っていければいいです。しかし、男はなかなか自立できない。結婚すると奥さんがお母さん役になっちゃう。ついつい甘えちゃって、同じようにやってしまう。「うるせえんだよ、お前」っていうときあるじゃないですか。あるいは奥さんにも甘える。男の方は長いですね。だから新宿の三丁目とかに変な店があります。パフパフ喫茶。よだれかけして、ミルク飲ませてもらいながら、「ハイハイあなた赤ちゃんね。ゆっくりしなさいね」と言ってミルクもらうんですよ。あれパフパフ喫茶、そこへ行くんだそうですよ。大手町に勤めている部長さん級が、そこを愛用しているという話聞きます。ちょっと恥ずかしいですよね。よだれかけをして、そしてミルクをもらいながら、ハイハイ、子守唄歌ってあげるわねと、こういう店ですよ。男には、疲れた時に退行したい。お母さんのところで、というのがあるのかもしれません。それが表れてる、有名な漫画がありましたね、エバンゲリオンというの。あれは、お母さんの胎内に戻って、胎内に入って操縦して戦うんですよ。お母さん、あれはイブなんだね。お母さんに戻っていくんですね。すごい、僕も見たことあるんですけど、それを子供たち皆夜遅く見ていたんだね、ビデオをね。お母さんの胎内に戻って、羊水の中まで戻って、そして敵と戦っていく。そういう企画でしたよね。碇シンジという名前で思い出すかもしれません。退行ということを思い出す漫画ですね。
もうちょっと行きましょうか。もうちょっと行きますけど、これが中２でしょう。中３になりますと、ものすごく男の子は楽になりますね。
「亡き祖父の 思い出深い食卓で 母の作ったレンコン料理」
こんな短歌あるんですね。お母さんを一人の女性として見ますね。
｢夏休み 遊び過ごして始業式 宿題終わらせ 徹夜の日々だ｣
いいですね。中３、お母さんの影がないですよ。もう自分で責任取りなさい。お母さんは腹決めているんですね。そして次は、
「男泣き タケシの母の死でわかる 家族の意味と 母の偉大さ」
ビートタケシ、古いんだけど、サキさんが亡くなったとき、うちの生徒が詠んだんですけども、この子は本当に家族を大事にした子ですね。その後、アメリカに行って、大学に行ってますけどね。中３ぐらいで、このぐらいになってほしいですね。
高１になると、受験勉強やりますからね、
「秋の夜 ウクレレを弾く父の傍 歌を合わせる妹もいて」
家族が見えてきましたね。家族ですね。お父さんが縁側でウクレレ弾いているんですか。妹が歌うたっているんですか。それを見ているんですか自分は。お母さん台所で皿でも洗っていますかね。家族が見えてきたら、これはもう成功です、この家ね。
うちは男子校なので、ひとり高１の女子を借りてきました。僕が感動した歌です。
「パート終え 椅子にもたれる母の背に お疲れ様と立つ台所」
いいですね。パートを終えて帰ってきたら、お母さんご苦労さんと言って、台所に立って行ってお母さんにお茶を入れる、ご飯を作ってくれる。こうありたいですね。女の子っていいですね。僕男ばっかりなので、本にも男のことばっかり。女の子欲しかったんですけども。息子は結婚したんです。なんて素敵なんだろう、女の子って。本当にいいですよ。誕生日覚えているしね。ちょっといい物送ってくるしね。電話してくれるしね、「お父さん元気？」とかね、無茶しないでね。息子が横にいるのにお嫁さんが電話してくるものね。そして何と孫まで作ってくれるもんね。もう最高ですよ。嫁さんびいきで僕は。いくらだって金なんてやるぞと思うんだけどね。女性っていいですね。こんな歌なんて見ると。でも、なかなか子供はこうは育たない。どこかでずれていくからね、そこが大変ですね。
▼ゴーレム効果、ピグマリオン効果
ここまで来ると、我々は、中２ギャング期から、男の子はチャムになる。チャムになったときは、仲間を大事にするから、お母さんを無視するから、非常に厳しいと。それが中学校の２年生の夏休み明けですね、男の子は。女の子はわかんないですけど、だいたいこの時に、今まであんなに親しかった女の子が、先生寄らないで、とか言う。ちょっとおかしくなってくると考えるといいかもしれませんね。そんなことやっていて、我々は子供の邪魔をしているんじゃないかと考えません。うまく対応しなかったら、子供の邪魔になるんですよ。ある男の子はこんな短歌を詠んでいます。
「お母さん 勉強しろとうるさいが 言わなきゃやるよ 黙ってほしい」
これ皆さん、この短歌聞いててどう思う。言わなきゃやる。言ってもやらないから言っているんでしょう。言わなかったらもっとやらないと思うじゃないですか。この前ある講演会でこの話をしていたら、前の方でニヤニヤしているお母さんがいる。どこかで見たお母さんだなと思ったら、この短歌を詠んだ子供のお母さんだった。それが何年ぶりだろう。大学になったかな子供ね。だから中３の時の短歌ですから。「お母さんちょっと話してください」と言ったら、皆の前で話してくれた。そうなんですよ。私が勉強しろ勉強しろと言っても、うちの子は全然勉強しなくて、本当に困っていた。その時に学年通信にこの短歌が出た。お母さん勉強しろとうるさいから、言わなきゃやるんだという短歌が出て、イニシャルで出ているから、うちの息子だと分かった。それで考え変えた。それから言わなくしたんだって。そしてちょっと距離をもって見つめてきたと。そしてその子は高校にいくわけですよ。高校に行ってガンガン勉強するわけですよ。そして学年トップの子になって、推薦でいい大学に入っちゃって、今大学生なんです。ありがとうございましたという話だったんですね、その時の話では。なんだそんなことだけで、子供は勉強することもあり得るんですね。皆がそうなるとは限りませんからね。人によりますからね。「でも、お母さん良かったね。お母さんどうしてたんですか」と聞いてみた。そしたら、習いものしたり、カウンセリングの勉強に行ったり、いろんな自分の趣味を勉強し始めたというんです。でも、妹がいるんで、妹にもまた言っちゃったそうですね。でも、お兄ちゃんはうまく育ったんですね。そのうち大学卒業するころに遊びに来てくれるといいなと思ってます、その子がね。いろいろ聞いてみたいなと思います。
それでひょっとしたら、お母さんや教師が言うことによって、子供の邪魔しているんじゃないかと思ったわけですよ。それで子供たちに聞いてみたわけです。お母さんや先生に言われて嫌な言葉をあげなさい。クラスから統計とって、ベスト９までにしたんです。１０個あったんですが、多すぎたのでひとつ抜きました。中３生の調査です。
ちょっと読んでみましょうか。
「まったくあんたはダメね」。まったくですよ。これ完全否定です。完全否定されて人はやりますかね。それから次ぎは、「いつもあなたはこうなんだから仕方ないわね」。子供が「いつもじゃないよ、お母さん、これで０点とるの三回目だよ」って言っても、「知ってんのよ、母さん。あんたのこと赤ちゃんから」。お母さんには負けますよ。そうするといつもですから、恒常否定ですよ。いつもといわれたら、もうやらないですよ。それから次は、「どうせあなたが努力したって、大したことないでしょうよ」。どうせって、未来否定でしょ。どうせやっても無理だったら、努力しますか人？ どうせあんたお父さんの子よ。これきついよね。その程度よ、ってこと。こういうのをゴーレム効果というんです。ゴーレムってよく漫画に出てくるんだけど、泥で作った人形。これは作った人の前で動くんです。それをゴーレムという。たぶんチェコかどこかの言葉なんです。これの意味は、親や教師が、「この子はこの程度だ」と思うと、子供はその程度に育つ。「うちに来た子はこの程度よ」と思ってしまうと、その子はその程度しか伸びないんですね。これゴーレム効果というんですね。昔大魔神といって、横浜の大魔神じゃなくて、大魔神って三部作があったんですが、あれはもともとは巨人ゴーレムというタイトルだったんです。すなわち、主人の言うとおりに動く。親の言うとおりに育つ。ゴーレム効果。最近漫画でかなり出ていますので、ちょっと注意して見てると、子供たちが読んでいるから、わかると思います。子供たちはピンと来るんです、ゴーレムってダメなんだよね、と。
もう一度言うと、ゴーレム効果というのは、親や教師がこの子はこの程度だと思うと、子供はその程度に育つ。「どうせお前お父さんの子よ」と言ったら、お父さん程度で止まる。恐いですよね。それに対して逆は、ピグマリオン効果と言います。マイフェアレディのもともとの題名はピグマリオンですね。ピグマリオンとは、有名な神話です。つまり、親や教師がこの子は伸びる可能性があると期待すると、その期待に応えようと伸びていくということです。マイフェアレディのオードリヘップバーン覚えていますか。オードリヘップバーンが、美しく、どんどんレディに変わっていくというのは、実は信じたからですね。変われると。親や教師がこいつは変わると思って接するとそうなる。
大魔神とマイフェアレディで覚えてくれればいいですね。ピグマリオン効果は、ローゼンタール効果とも言われています。ローゼンタールというアメリカのハーバード大学の有名な教授が実験したんですね。すごい悪い実験だったけど。ある小学校に行って、ハーバード大学の何々です。今から試験をやりますといって、子供らに試験をやらせるんです。採点するんですよ、後で。そして担任だけに言うんです、その結果を。「これは秘密ですよ、このテストはですね、将来の可能性をはかる試験だったんですよ。良くわかりました、先生のクラスのこの子と、この子はきっと伸びますよ。そのような結果が出てますよ。でも内緒ですよ」と言って帰るんです。悪いでしょう、この調査。だから皆怒ったんですね。でも半年後に来てテストをやったんですよ、クラスの。そしたらそのクラスで、その言われた子らがかなり伸びてたんです。それでこれは確かめられたというのが、ローゼンタールの論だったんです。何が起こったかというと、子供が「先生わかりません」というと、担任の先生が「大丈夫お前はやればできるんだから」という声がけをしていたと言うのです。ちょっと伸びるなんて言われたので、その意識があったのでしょう。「じっくりやればできるから、お前は大丈夫」なんてね。ローゼンタール効果と言いますね。
▼まちがったメッセージの送り方
さて、言われていやな言葉の４番目。
「やる気になったのは嬉しいわ、でも続くかしら」
これじゃあね。「お母さんは心配だわ」ってことですよ。お母さんが心配しているからダメだと思っちゃう。「やる気があって嬉しいわ」で終わってないで、どうして「しかし」を使うかですよ。逆接ですよね。逆接を使うときはよっぽど注意しなければいけないですよ。逆接の後ろが前を否定するからです。最初にほめてはいます。やる気になって嬉しいわ、と。でも続くかしら、と言うと、「続かない」というメッセージを送っている。「あなたには続かないわよ」。たとえば、こんな例はどうですか。「あなたは友達の面倒をよく見るし、掃除当番もしっかりする良い子です。しかし英語、数学、国語の勉強わかりません。二学期はしっかり勉強しなさい」。褒められた感じがしましたか。叱られてるでしょう、これ。こう言われて勉強しようと思いますか。では、逆に言ってみます。「英語、数学、国語の勉強がまだまだあなたには足りません。しかし友達の面倒はよく見るし、掃除当番もしっかりするいい子です。二学期はしっかりやりなさいよ」と。褒められた感じがしますね。これが人を指導するときの、重要な基本なんですが、前でどっちかというと、改善点を示す。教師は改善点を示さないといけませんからね。「しかし」と言って、あとからほめる、肯定するんですね。このことがものすごく重要です。通信簿もそうですね。まず悪いところから、「あなたはこことここに問題点がある。しかしあなたにはこれを乗り越えていく力がある。あれほどスポーツで頑張っているんだから、集中力はあるはずです。先生はあなたを応援していますよ」ぐらいに言われたらね、改善点も見える、先生がいいところを見てくれていることも伝わる。いい点を先に書いて、あなたは野球部で集中力もあるいい子ですよ。しかし英語、数学の勉強足りませんよと言われたら、ほめられたほうがなくなってしまう。「でも」の使い方ね。
シンプルでいいんだね。嬉しかったらうれしいだけ。「お母さんうれしい、こんな点数取ってくれて」と、そこで終わっとくといい。「でも、平均点は何点なの」とか、言う必要ない。
どんどん行ってみましょう。
「あなたなんかにできっこないと思うわ。」
あなたにはできっこない。未来否定ですね。できないんですね。ここで行動療法の基本がでてきますね。「チャレンジするからできるのではない。できると思うからチャレンジするのである」。これは行動理論の基本なんですね。行動するというのは、実はできると思うから行動するんです。できないことはやらないんです。先ほどもいった、頑張ろう東北。頑張ろうだけじゃ子供たちできないんですよ。我々はできるということを示さなければ。日本はこんなに行動というものがしっかりしていて、日本人の頭はすばらしいんだ。ああいうことがあって、日本人は皆助けあったじゃない。こういうことがあれば絶対日本は復興すると思うよ、と言わないと、何か漠然とできるできると言われても困ります。「やれ、頑張れ」と言われても困る。彼らもそれ以前にがんばってるんだからね。これが有名な行動理論です。
宝くじを買う人はいますか。宝くじが絶対当たりませんと言われたら買いますか。買わないよね。当たる可能性があると思って３万円もつぎ込んじゃうんでしょ、で３千円当たって喜んでいる。あれおかしいね。宝くじが当たる可能性があると思っているから、だからチャレンジするんです。できると思うから。うちの野球部なんか絶対そうですよ。春なんかには「先生今年は甲子園連れて行くから」と言ってくれる。僕は心の中で「おまえたちにはできるわけない」と思ってるんです。でも、彼らはそう思ってるから言う。だから日曜日、あんな苦しい練習やる。そして土曜日も遅くまでやる。試験前だって練習する。夏休みに試合があるから。甲子園に可能性がある、そんな思いがあるから彼たちは頑張れる。でも、ふつうに見たら「まさかそんなことは」と思うチームだよ。でも、そんな夢を持っているから、あんなに暗くなっても頑張るんです。できると思うから彼らはチャレンジするんです。自分たちも「もしドラ」みたいにできるかもしれないじゃないですか。ひょっとしたらマネージャーさえ連れてきたらできるんじゃないかと思っちゃう。「もしドラ」は良い夢を与えましたね。うちも今回、監督連れてきたんですね。でも、１回戦１０対３で、７回コールド負けでしたね。学校がふたつあって、もう一校は１０対０でコールド負け。２回戦には応援に行くよと言ったんですけど、１回戦で終わりました。勝てると思ってるから、必死に練習する、これは絶対に重要ですね。我々は「できる」という思いをつぶしていけないですね。
「おまえの将来は真っ暗だね。社会のNakajimaでは生きていけないよ」
これは脅迫。教師がいちばんよく使う方法です。「いいかこれ試験にでるぞ、いいか聞いておけ。何お前話してんだ。落第するぞ。おまえなんか大学へ絶対いけないから、そんな調子じゃ。落第するぞ、俺の話聞いてないと」。こんな感じ。これやると確かに楽なんです。一瞬黙るから。でもこれは脅迫です。「お前の将来真っ暗だね。将来ろくな人間になんねえよ」。男子高校なんかで口が悪い先生いるとね、こういうの出てきますね。
「今の時期には３時間勉強するのが当たり前だよ」
責任転嫁ですね。社会でいかにもそう言われてるみたいに言う。これもおかしいですね。
「さっさとしなさい、お前は本当にのろまなんだから。」
これは言葉の暴力です、完璧にね。これは将来危ないですね。「のろま」という言葉が入るとね。「さっさとしなさい」というのは、子供たちは気にしないと言っていました。それはお母さんの枕ことばだと考えているそうです。「そうか、じゃあ、明日の朝から夜寝るまで、何回お母さんが言うか勝負しよう。このクラス全員だぞ。いいか明日黙ってわからないようにつけておけ」と言って、数えさせました。「何回だったら優勝すると思う」「２０回」とか言ってましたが、翌々日に結果発表。最高が３２回。
考えてみたら、どの家もそれぐらいあるのね。早く起きなさい。早く起きなさい。さっさと降りてらっしゃい。早くご飯食べて、早く歯を磨いて、早くトイレ行って、早く着替えて、何やってんの、早く行きなさいよ。早く帰ってくるんですよ。これでもう１０回です。そして帰ってきたら、早く制服たたんで……、２０回や３０回はふつういっちゃう。最高は３２回というのは、うなづけました。お母さんの枕詞だから、これはリズムだからいいんだと。もし言わなかったらお母さん病気かと思っちゃう。じゃあ、次に、お父さんの枕ことばはなんだろうと聞いた。わかりますか、お父さんの枕ことば。生徒からは出なかった。ある講演会で出たんです。飲屋に行ってなんて言います。とりあえず。「とりあえずビール」。家に帰っても、「とりあえずご飯」。だから、お母さんの枕ことばは「早くしなさい」「さっさとしなさい」、お父さんの枕ことばは「とりあえず」にしました。とりあえず結婚しておこうかと思って結婚した。そういうのあるかもしれません。危ないですよ、男は。
「あなたのせいで、私はこんなに皺が増えたわよ」
これ、あなたのせいじゃないですね。歳のせいですね。でも、こう言いますよね。あなたのせいで、と。もう一つは、「あなたを生んだせいで、太ったのよ」というのも多かったです。二つあったんですね、「しわ」と「太る」。
そんなことをやってみたんですが、どうですか皆さん。こんなものが子供の成長の邪魔をしているというのは、恐くないですか。
▼無意識が動かす
氷山を考えてください。氷山で水面よりも上をふつう、意識と言います。水面下が無意識です。これも行動理論ですね。ふつう、意識が考えて、無意識が応援するときに、人間は行動できるんですね。ハワイに行こうと言ったとき、「そうだそうだ、ハワイいいぞ、金もあるぞ、休みもあるぞ」と思うと行くじゃないですか。でも、意識がハワイに行こうというときに、「ばか、何考えているの、行ったって面白くない。芸能人ばっか。お金かかるし」。意識が考えて、無意識が応援するとき人は行動できる。
子供たちは全員が勉強しようと思っている。中間考査悪くたって、期末考査やりませんという人おりませんよ。絶対、期末考査はがんばろうと思っている。で、また同じなんです。「お母さん僕勉強するから今日から」「わー、うれしい、やっと言ってくれた」と思って、一時間してから紅茶もっていくと、寝ているんですよ。本開いてよだれたらして。「この子はまた」と思うじゃないですか。勉強しようと意識は考えているんです。でも、無意識が言っちゃうんです。「どうぜ無理だよ。できねえよ、お前に。お前あほじゃん。今さら」。こんな言葉が無意識に今まで入っていたら、これまで見てきたような言葉が入っていたら、子どもは行動できなくなるんです。「勉強しよう」「今さら」。「勉強しよう」「いつも言うだけだろ。また寝ちゃうぜ」と、無意識が邪魔するんです。常に無意識が影響を及ぼしてくる。恐くないですかね。
これをなんとかしなきゃならない。この悪玉を。それでですね、皆考えたわけですよ。寝て意識がなくなったら、無意識だから、無意識のときに、テープ聞いたら勉強できるんじゃないかと思った。また催眠で無意識に入っていって、無意識を変えればいいんじゃないかと思った。で、みんなやったけど無理だった。目が覚めたら全部忘れてる。高い教材買ったんです、３００万とか。悪い業者がいますね。でもそうじゃなくて、実は方法があったんです。寝る前に、布団に入る時に、自己暗示をすることは有効だったんです。これが今日の重要なポイントです。
たとえば、考えてみましょう。絵を習おうと思った。油絵を。できる人はどういう人ですか。「絵を習おう」「ばーか、小学校の時にいつも下手だ下手だと言われてて、お前の絵はなんだかわからないと言われていたじゃない」。そんな思いがあったら、できないでしょう。それに対して絵を習おうという時に、「そうだ校長賞もらったな。金賞もらったな。先生がセンスあるっていってくれたな」。そう思う人は、できそうですよね。皆さんがやりたいことがあったとして、何でもいいですよ、「イチローになろう」でもいいですよ。何か習おうとしたときに、「ばーか、お前できるわけないよ」と否定されたら、それで終わりなんです。ここが重要なとこです。自己暗示といって、日本では白隠禅師という、江戸時代の臨済宗の中興の祖が書いていますね。江戸時代の始まりですね。「夜船閑話」という本に、いいこと書いてます。夜寝るとき、布団にすべてをまかせて、「ああ今日も良かった。明日も頑張ろう」と思うこと。それだけなんだよ、自己暗示だから。
それに対してクーエというフランスのお医者さんも言いました。これは有名です。これは法政出版から「自己暗示」という本で出てます。クーエは世界中で自己暗示の教えとして知られています。ビートルズのビューティフルボーイという、小野ヨーコさんの息子さん、ショーンの子守唄にビューティフルボーイという歌に使われています。
Day by day in every way I am getting better and better.
日々にあらゆる面で、私はますます良くなっていくと思って寝なさい。ああ今日もいい１日だったな。先生も褒めてくれたし、友達もいいやつがいるし、お母さんもニコニコしている、ああ明日もいい日だろうな、俺って良くなってくるな。こんな感じ。それが、Day by day in every way I’m getting better and better. これビートルズのビューティフルボーイっていって、ショーンの子守唄です。クーエの方法は世界中で使われています。ビートルズの歌にも使われているんだから。ビートルズの歌はこういう歌です。モンスターは行っちゃったよ。モンスターは行っちゃったよ。もう泣かなくていいんだよ。お前は日々にあらゆる面で、ますます良くなっていくんだよ。こういう歌詞ですね。
ただねこれだけで子供は勉強するかというと、そんなことはない。だからそこに入れるものを考える。一つは「やったー貯金」です。「やった－」と思う時あるでしょう。今までプールで２５ｍ泳げた。やったじゃん。負けている試合で、最後にヒット打って逆転した。やったじゃない。あの時の感動を思い出すんです。そうすると何かにぶつかったとき、これが使えるんです。自転車に乗れたとき、逆上がりしたとき、「やったー」と思った。漢字で１００点取った時、やったー貯金がいっぱいあるとよさそうでしょ。何かにぶつかったとき、やったー貯金を出すんです。
もう一つ、重要なのがありますね。できない子供たちにとって、もう一つきついのが、つまずきです。どこかで勉強でつまずいている。そこを見つけてやる必要がありますね。９歳か１０歳のときに壁があります。小学校３年生か４年生のときに、つまずいている率が高い。分数が出てきたり、国語だと抽象的な漢字が出てくる。今まで山とか川を習っていたのに、急に、自信とか勇気とかいう漢字が出てきて、先生がそれを５０回書いてこいとか言うから、ますますわかんなくなっちゃう。それが１０歳ですね。１０歳の壁。ＮＨＫが取り上げて３回シリーズでやったんです。僕も取材を受けましたが、子供たちのつまずきをしっかりと見ないと、中学、高校どんなに頑張ってもその子は伸びない。ここはちゃんと抑えておかなきゃだめですね。
ここは重要ですので、皆さんも何かにチャレンジするときには、この発想をしてください。自己暗示。今日からですよ。自己暗示も逆をやらないでくださいね。「あ～あ、今日も嫌だったな－」と思わないでね。「ああ今日はいい日だったな」と思うんですよ。意志があるときは拒否できるからいいけれど、無意識の時は入ってしまいますから。
クーエの法政出版の「自己暗示」。白隠禅師は、本屋にずらっと並んでいます。白隠禅師の健康法とか。読んでみられると、必ずプラスになりますね。
▼Ｉメッセージ、ＹＯＵメッセージ
ここでワークショップをやろうと思ったんですよ。いつも活発で明るかった子供が、最近元気もないし、話しかけても言葉数が少なくなったと、気にしていたら、あるとき「先生、学校が面白くないんです。どうしてこんなに勉強しないといけないんですか」と聞かれたら、皆どう答えますか、というワークをやろうと思ったんだけど、時間が少なかったですね。どう答えますか。
「皆勉強やっておかないと、社会に入って通用しないぞ」と説教しますか。講義をしますか。でも、そういう言葉じゃきついということをわかっておきたい。ふつう、人は、命令したり、説明したり、提案したり、アドバイスを与えたりしちゃうんです。でも、それはだめだと、ゴードン博士は「親業」の中で言ってます。こういうときは相手の言葉を使うといい。これを、反射、オウム返しといいます。例えばこうです。「先生、学校が面白くないんです。どうしてこんなに勉強しなきゃいけないんですか」「あら学校面白くないの」、こんな感じです。「だってー、数学なんて全然わかんないんだもの。数学なんかやったって意味がないでしょう、先生」「あ、数学はやっても意味がないと思っているわけ？」「だって、どういうとこで役に立つんだよ」とくるから、具体的に話せばいいんです。こういうことで説教を相手にしてもしょうがないということです。
または、Ｉメッセージ。「学校面白くないんですか。どうしてこんなに勉強やらなくちゃいけないんですか」「あー、どうしてこんなに勉強やらなくちゃいけないんだ、と思ってんだ。うーん、先生もそう言われちゃうとちょっときついな」っていう感じでね。Ｉメッセージで応える。「お前はどうしてそんなばかなこと考えるんだ」と言っちゃうと、ＹＯＵメッセージ。「先生も悩んじゃうなあ」と言って自己開示。「そうだ一緒に考えようか」と、入っていけばいいですね。基本的には、信頼関係を大切に。そして一度に、多くは言わない、シンプルに。女性の場合は、シンプルかつエレガントに。僕がエレガントの手本をやると笑われちゃうんで、今日はやりませんが。相手の気持ちを大切にする。相手の気持ちを大切にするには、反射、オウム返しという方法を用います。カウンセリング用語です。あるいは、相手の言った言葉を使うんです。「先生、学校やめたい」「あら、学校やめたいの」「だってさ、友達が俺に意地悪するんだもん」「友達が意地悪するから、やめたいの」「うーん、それだけじゃないんだけどさー」。こうくればしめたものです。２０秒の寄り道です。２０秒ぐらい、反射、すなわち相手の言葉を使っていると、相手が自分の本当の思いを出してくることがありますね。やってみてください。タバコ吸ったとき、「タバコなんて吸っちゃいけないだろ、お前。何歳だと思ってんだ」と、ＹＯＵメッセージ行くよりは、「どう思ってんだー」「お父さんと喧嘩してて、いらいらしてて、お父さんのたばこ持ってきちゃった」「だめだよなー、それ」と気づいていく。そのようになってくれば、良い指導ができそうです。
いろんな気持ちを大切にする。これがＩメッセージです。
「先生はお前が騒いでいると授業ができなくて、本当に困るんだけど」「お前さ、授業遅れてくるだろう。それがね、先生にとってはものすごくやりずらいんだよ。５分間やったのが戻っちゃうんだよな。だから絶対授業に遅れないでほしいな」。こういう話し方がＩメッセージです。ＹＯＵメッセージよりも、Ｉメッセージを、これを覚えておいてください。
教師のコミュニケーションでもうひとつ大切なことは、大きなことを小さくする、です。そして、抽象的なことを、できるだけ具体的にします。そして否定がきたら、肯定にすることです。
「お前将来何になりたいの」「イチローみたいになりたい」。それを聞くと、「お前、無理だよ」と思うでしょう。でも、小さくして言うんです。「へー、イチローになりたいんだ。イチローになるために何するの？」「何言ってんの、先生、練習に決まっているでしょう」。これで小さくなりました。でも、練習って、ものすごく抽象的ですよね。だから、「練習ってなんだよ」「５００回の素振りと、一時間打ちっぱなしにいって、それから筋トレして、それからね……」「ああなるほど、そうか、すごいなお前。５００回の素振りと一時間の打ち込みと、それから筋トレ、へえー」。話が具体的になってきましたね。そうすると、次の日きて、大体「先生、僕無理」と言う。あたりまえです。イチローの真似することなんてできない。でも、「無理だ」って言ったときに、「やっぱり無理だったな」と言っちゃいけないんです。「へー、何だったらできるの」と聞く。それが肯定です。できる方向に話を持って行く。無いもので受けない、有るもので受ける。これが会話の鉄則です。
「先生、僕東大に入るから」と言う生徒。「お前、自分の偏差値知ってんのか」と言いたい。でも、そう言ったらそれで終わりですね。「東大に入りたいんだ」「へー。じゃあ、東大に入るために何やればいいの」「先生、勉強に決まってんじゃない」「あ、そう。勉強頑張れよ」、じゃあ動かないですよ。だから、「勉強って具体的に何をやるの」と聞く。河合塾へ行って、駿台行ってとか言うかもしれない。英語はこれをやって、とか言うかもしれない。それを全部聞いてやる。そしたら、駿台に行ってみた。でも、そこで、無理だと言われた。お前の偏差値じゃあ入れないよと言われた。そこで「なんだったらできるの」と言ってあげる。大きいことを小さくして言わせて、抽象的なことを具体的になるように、あれこれ言わせて、考えさせて、そして実行に移させる。実行してみたら、だいたい「やっぱり、僕には無理だ」と否定できますから、「無理だな」と言わず、「へー、なんだったらできるの」と、できることに目を向けてあげると、彼らは自分でやれることを考える。５００回の素振りはだめでも２００回ならできるとか、走り込みは１時間は無理だけど２０分はできるとか。２０分でも、やらないよりはいいですよね。
私が今日話したかったことは、生徒との会話はすごく重要だということです。いろんな講演会でも話してることなので、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。
子育ての中で用いたり、生活指導において用いていただけたらと思います。また何かの機会ありましたら、ぜひまたお会いしたいと思います。本日はありがとうございました。
司会 ９０分を超えて、しっかりと話していただきました。本当にありがとうございます。川合先生にお尋ねしたいことあれば、この機会にお尋ね下さい。
●磐城一校の草野です。うちは女子高なんですが、男子も女子高も同じだよということをおっしゃいましたが、だいたいその線で同じだと思って解釈をしていったら、よろしいんでしょうか。
川合 女子の方が２～３年早いんじゃいかと思います。その点がたぶん違うんだろうと思います。
一つ言い忘れたことがあるので、補足します。ある女子高で講演会をやっていました。その女子高は東大に何十人も入っているところなんですけども、逆もあるよと言われた。うちの学校の話をすると、できない子たちにどうすればいいかという話になるが、その女子校は、自信がある子ばっかりの学校だったんです。そういう学校では、またちがったつまずきが子どもたちに生じる。つまり、中学校のときトップクラス、いつも満点ばかりとっていたのが、その学校に入ったら、自分はうしろの方にいっちゃった。ショック受けて学校を休む子が出てくる。それで、「できるんだよ」と教えるよりも、むしろ、「できないこともあるんだよ」としっかり教えなくてはいけない。「それがふつうなんだよ」と伝えることも必要だというのです。今日はうちの学校の例を出したので悪いほうの例が多かったかもしれませんが、逆もあるということを覚えておいてください。いろんな学校によって違いますからね。
女子校と男子校では違う。こないだ、中井俊已さんという方が、「なぜ男女別学は子どもを伸ばすのか」という本を書いたのです。女の子は女の子らしく育てようとするから物理とか数学できないんだと考えるかもしれませんが、女の先生が教えると、物理なんかもすごく伸びる、そういう実例がかなり出てきているそうです。男の先生が女性に物理を教えていると、男用で教えている。女の先生が教えると物理がすごく伸びる。そんなことがその本に書いてありました。どこまで実証できているのかわかりませんが。しかし、女子校と男子校の違いというのを、鮮烈に出して、ものすごく重要だなと今思います。
質問に加えて、余計なことまで話しました。
司会 司会者から質問させていただきますが、川合先生、普段高校生などを集会、朝礼とか、校長講話があるときでも、今のようなペースでお話なさいますか。
川合 中学生にも授業をしています。だいたいこんな感じで話してますよ。朝礼なんかもそうですね。例えば、「しずかちゃんに学ぼう」という授業をやりました。中学生のふつうの授業ですよ。
しずかちゃんってすごくないですか。ジャイアンが、「俺の歌のリサイタルやるから、来いよ」と言ったら、のび太は「いやだな、でも行かなきゃ殴られるな」といって行きます。でも、しずかちゃんはこう言います。「あらタケシ君、さそってくれてありがとう、でも私今日、ピアノのレッスンがあるの。また誘ってね」と。そうするとジャイアンは、ルンルンって帰っちゃうんです。不思議だよね。のび太が言ったときは「殴るぞ」なのに。しずかちゃんとどこが違うんだろう、比べてみよう、と授業で話すのです。
しずかちゃんは、ジャイアンと呼び捨てにしないで、名前を言っている。それから「しっかり誘ってくれてありがとう」と言っている。自分が断る理由をしっかり具体的に話している。「また誘ってね」と、お礼まで言っている。これが違うんだねー。
こんな感じで話してます。講話の実例でした。いっぱいそうのはやりますね、毎日やっていますからね。エヴァンゲリオンもやりますよ、碇シンジを使ってね。「お母ちゃん、という人、はい手を上げて」ってね。「手は上がらないけど、けっこういるでしょ。男の子はそうなんだよ」なんてね。こんな話してると、尽きませんね。
「先生、なぜ勉強しなきゃいけないんですか」と、さっきみたいに言う生徒がいる。「うーん、勉強なー。悩むよなー」。で、こんな話をしてあげます。「ある人がさ、イギリスからオーストラリアに移住したんだよ。イギリスは寒くて、冬がものすごく厳しいんだって。でも、オーストラリアに行くと、一年中花が咲いてる。するとその人はひらめいた。そうだ、これはミツバチを持ってきて、はちみつを集めたら、絶対大儲けできるぞと思ったんだって。それでヨーロッパから優秀なミツバチを輸入して、オーストラリアで花の蜜を集める仕事をした。難しい言葉で、養蜂業っていうね。で、養蜂業やって成功したと思う？ １年目は大成功、２年目はミツバチが半分しか働かなかった。３年目はほとんど諦めた。どうして諦めたかわかる？」「あったかいから働くのがいやになった」「そうなんだよ。暖かいっていうのがヒントだね。一年中春だから、遊んでても冬がないから、蜜を集める必要がなくなったんだよね。君らはいま青春じゃん。青春のとき、なんでこんなに厳しい練習とか勉強しなくちゃいけないの？ そこだよ。将来、冬が来るからなんだ。大学に入るのも冬みたいだし、大学出てからもあっちは冬なんだよ、厳しいんだよ。今のうちに蜜をためておかなきゃいけない。君たちが勉強しているのは、蜜をためるためなんだよね」。こんな感じですね。あちこちで、使える材料に出会いますよね。それは常にノートにメモするんです。あ、これ使える、今日はこれ、高橋尚子のこのスピーチ使える、とかね。そんなことをメモしながら、引き出しをできるだけ多くして。