３．部会＜生徒指導部会＞
安食 秀利
本校の学校改革における生徒指導
１．はじめに
本校は山形県の北部に位置し、昭和４０年、最北地区唯一の男女共学の普通科私立高校として創立し、４７年目を迎えている。昭和４５年には衛生看護科が、昭和５０年、普通コースに特選コース（大学進学を目指す生徒を対象とした）を設置した。また、平成８年４月には、新校舎が完成し、整った環境の中で、教育活動が展開された。
平成１３年に普通科に福祉コースを設置、平成１６年に衛生看護科の閉科、平成１８年普通科福祉コースの閉科を経て平成２０年度それぞれ特徴を持ったＥコース・Ａコース・Ｓコース・Ｔコースの４つのコースを新設し生徒を募集。今年度が新コースの完成年度となる。１学年６５名、２学年１２０名、３学年６５名。現在本校がある最上地区は中学生が減少し、地区に６校ある県立高校（分校を含む）は１校をのぞき、すべて定員割れしている。県立高校の授業料無償化や、公立高校の再編が遅れている状況もあり、中学生が本当に入りたい学校、保護者が入学させたいという、学校づくりが必要となっている。
２．学校改革の柱
Ⅰ 生徒の学力の向上
ゼロ校時、学習指導期間の設置
Ⅱ 生徒の質を高める
制服・ジャージの変更、着こなしの徹底、挨拶、問題行動防止
Ⅲ 各コースのブランド化
魅力あるコースづくり、コースの特徴を明確にする
Ⅳ 部活動の強化
県でトップを目指す部活動
３．１年間の生徒指導方針とその取り組み
①校長方針
（１）目標を持って生活する生徒を増やす。
（２）生活マナーの向上
②生徒指導課方針（H２２年度）
A 生徒理解を深め、共通理解のもとあらゆる場面を通じて全職員で行う。
B 生徒会・部活動を通じ、自主性と意欲を育て、学校生活の充実と活性化を図る。
C 校内外の問題行動の早期発見と非行防止に努める。（保護者との連携を持つ）
③成果目標（数値目標・達成状態）
目標(分掌方針)
A共通理解の下、あらゆる場面全職員で指導する。
成果目標： ・制服を正しく着させる。（着こなしを良くさせる）
・遅刻者の減少(毎日遅刻をチェックし、職員室に掲示する。)
・着こなしを良くさせる。職員室への出入りのマナー度をあげる。
・生徒理解のため、昨年の指導を活かしつつ、年２回Q-uアンケートを実施し、対人関係を図り、データーを学年・クラス作りに活用する。
・身だしなみ点検外でも常に職員全員でチェックを行い、問題がある生徒は身だしなみ指導者表に記入し、職員室に掲示し状況を全職員で把握する。
B生徒会・部活動を通じ、自主性と意欲を育て学校生活の充実と活性化を図る。
成果目標： ・生徒会活動の昨年度からの企画行事をすすめる。
・壮行式で運動部の大会へ向かう気持ちを高める。
・大会成績を全校生徒にわかるように垂れ幕で発表する。
C校内外の問題行動の早期発見と非行防止に努める。
成果目標：今年度目標 ６件６名
（昨年度１０件１１名特別指導数、喫煙４名、窃盗３名、暴言・けんか２名、テスト不正行為２名）
Q-uアンケートを活用し、生徒理解を進め、早期発見、事前指導に活かす。
長期休業前に生徒指導のたよりを配布する。
行動目標
A-1身だしなみ検査（４月・８月・１月全職員で）
◎クラス・学年で適宜連携指導。
◎職員室の出入り指導をすすめる。
A-2遅刻指導（毎日チェックし職員室に掲示する）
遅刻指導は、5回目、8回目、10回目、11回目に指導する。
A-3生徒理解のデーター収集と分析
◎ 年２回Q-uアンケートと生活アンケートをとる。
B生徒会活動
◎前年度からの行事を継続し、企画・立案・実施・反省をする。
◎生徒の活動の活性化を図る。
C-1特別指導数を減らす
◎成果目標実現に向け、非行・問題行動の早期発見・事前事後指導の啓蒙
◎自転車点検（５月・９月）～警察と二重ロック指導を一緒に実施
◎登校時・下校時通学指導
（４～５月、６月、８～９月、１０月全職員で立哨）
◎年２回Q-uアンケートと生活アンケートをとる。
C-2早期発見・非行防止をすすめる。
◎事前事後の事故防止の啓蒙として生活便りを作成配布する。
◎警察・補導員・PTAと連携指導する。（６～１０月）
（最上広域青少年指導パトロール・最上地区学校警察連絡協議会パトロール
・最上地区高等学校生徒指導パトロール・新庄東高PTA補導部パトロール）
◎年２回Q-uアンケートを実施（５月と１０月）
◎薬物乱用・携帯電話の使用（インターネット犯罪を含む）の指導
◎テスト期間中、学年と協力して、市内の見回りを行う。
登校時玄関指導 ７：５０～８：１０
月（佐藤ま）火（川田ゆ）水（安食）木（海藤）金（加藤た）
身だしなみ検査 学期はじめに行う。学年団プラス学年外全職員で
４．日課表の変更
ねらい
以前は朝電車通学者が駅に着いてから、学校が始まるまで１時間以上時間があり、生徒は時間をもてあましていた。０校時設定によりどこの学校よりも早く授業を始め、基礎学力の向上と１校時目の授業へ落ち着いた状態で取り組めるようにしたい。また全校一斉清掃で生徒全員が必ず清掃に携わることにより、放課後よりも落ち着いて取り組むことができ、また環境を整えることで午後の授業へも気持ちよく臨むことが出来るようにする。
欠席・遅刻・早退について
ア 遅刻・早退・欠席の場合あらかじめ担任に申し出、許可を得ます。やむを得ない場合は、事後にすみやかに届け出てください。
イ 忌引きについては生徒手帳「慶弔規定」に従います
ウ 8時20分まで教室に入ります。8時20分「0校時」学習開始に教室に入れず遅刻した生徒は、
8時40分のSHR開始まで多目的室で学習やボランティア清掃などをします。
エ 遅刻回数に応じた指導をします。
５．０（ゼロ）校時の内容
ねらい
コース目標に沿った学力の定着、生活リズムの確立、学年・コースの生徒に合わせた内容で行われています。このほか、修学旅行のプレゼン、アンケートの実施、応援練習、学年集会等が必要に応じてゼロ校時で行われています。
平成２３年度 ゼロ校時担当
６．授業評価アンケートの実施
ねらい
教員の授業規律を高め、授業内容を生徒が興味をもてる内容に全職員で意識することで、生徒が積極的に授業に取り組めるようにする。また保護者へも授業へ興味関心を持ってもらい意見を出してもらう。
目 的
(1) 生徒の授業に対する評価を把握し、生徒の実態にあった教科指導の一助とする。
(2) 生徒自らが学習への取り組み状況を見つめ直し、「良い授業」とは何かを考えさせる。
(3) 各教科で評価内容を分析し、改善方法を検討する。
① その結果を保護者に提示することで、本校の教育に対する理解を深めてもらう。
② 次年度の授業計画（シラバス）に反映させる。
７．行事改革
体育フェスティバル生徒自信が本当に楽しむことが出来る行事内容にしていきたい。
８．学習指導期間の設定
１学期末試験前の学習指導について －教務課－
・ 目 的
(1) 素点での赤点者をなくする。
(2) 試験に向けての、学習習慣がつくれるようにする。
・ 参加者
(1) 希望生徒
(2) 素点で40点未満が予想される生徒については、参加を促してください。
※２学期以降は前回のテストの赤点者が対象
・内 容
(1) 各教科で検討する。
(2) 学習の方法と、学習習慣が定着するよう指導してください。
９．本校の問題行動の推移（過去５年）
喫煙関連 万引き 暴 力 金銭強要 自転車窃盗 その他 合計
平成１９年度 6 8 1 2 8 9 34
平成２０年度 10 2 2 0 1 5 20
平成２１年度 4 2 2 0 1 2 11
平成２２年度 1 1 0 3 1 3 9
平成２３年度 0 0 0 0 0 １ 0
その他はカンニング、携帯電話によるいじめ、不純異性交遊など
新しくコース制にし、入試で合格ラインを引き上げたこともあるが、生徒指導中心の学校改革に取り組んだ結果毎年問題行動が減少している。
１０．生徒の変化
・目標を持っている生徒が多くなった。
・課外活動への加入率が上がった。
・雰囲気・・・授業への取り組み、学校全般が落ち着いた。
・制服の着こなし、挨拶が大変よくなった。
１１．今後の課題
課題提出や追試に慣れがでてきて、緊張感が少し薄れていたり、服装など少しずつ着こなしが崩れてきている。今後常に新しい事に挑戦し学習面、生活マナー面のハードルをあげていき、生徒が活き活きと活動する学校作りを教職員全員で行っていきたい。
質疑応答
●福島県 郡山女子大学付属高等学校 教諭 鈴木 正 先生
資料の７の行事改革についてですが、学校の様子を地域に発信できる行事ということでお話がありましたが、具体的にどのような内容か教えていただきたいのです。
[応答]
大きな行事の柱の３つの中の１つですが，地域に発信することができる行事ということで、主に文化祭を地域の方と連携して行うことができないかということ、そして自分たちがコースとしてやってきた成果を発表するといったことを文化祭というよりフェスティバルということで行っています。今年度９月に開催されるのですが、内容としては最近の流行のＢ－１グランプリのようなものを各地区のＰＴＡの方と協力して、うちの地域、新庄市，最上町の周りにいろいろな特産物があるのですが，各クラスが抽選で引き当てた地域の特産品を使って何かを作ろうということになっています。そういった形で、保護者、地域の方と協力して、今回“新東Ｂ－１グランプリ”を開くということで行っています。今は夏休みを利用して、生徒たちは準備に励んでいるところです。そういった形で地域の方と連携を図って、また周りの人にも来てもらいやすいような内容として食べ物で交流を持てたらということで、行事を行っているところです。
●福島県 桜の聖母学院中高等学校 教諭 荒賀 久仁夫 先生
この数年間の改革は校長先生が代わられたとか、そういうふうなきっかけがあってのことなのか，また，独自で考えられた改革なのでしょうか。何かコンサルタントとかそういう方のアドバイスを受けてなのか、または、校長先生からのご指導があって行われたのか、先生方の中で話し合いがあったのか，話し合いを重ねた結果このような様々な分野にわたる改革をなさったのか，差支えない範囲で教えていただけますでしょうか。
[応答]
四コースに分かれた学校改革を行うにあたって、校長や理事長からこうしなさい、ということではなく、教職員の中から「このままではうちの学校に入りたくて入学してくる生徒がいなくなる」、という危機感を持って始まりました。魅力ある学校にしなければということで、教職員の中で話し合いがもたれて、学校改革の担当の先生を決め、各コースごとにいろいろな学校を視察したり、日課表も他校から参考にさせていただいたりして組立てました。まずはこの学校改革に関して、教職員自ら全員の意見で新しい学校にしよう、というのが最初のきっかけになりました。
●秋田県 聖霊女子短期大学付属中学高等学校 中学生生徒指導主事 三浦 康平 先生
Q-uアンケートについて、本校ではそのアンケートを実施していないのですが，Q-uアンケートの内容や活用の仕方、有用性などを教えていただけますでしょうか。
[応答]
Q-uとはいろんな心理検査の一つとして行っているもので、生徒自身が今学校生活に満足しているか、また適応しているかということの状況を見、参考にできるものです。やはり学校生活を見て、いろいろなことに積極的に取り組めない生徒や、こもってしまう生徒は、結果を見ると何らかの不満を持っているという表で出てくるという点で合っていると感じます。それを基にして、面談を行うなど、改善点として「何を悩んでいるのか」などそういったものを少し早めに聞くことができます。教師としては「やっぱりな」という感じで結果を見ることが多いのですが、その子がどういった形で不満を持っているのかというのがわかるテストになっています。学期はじめというより、クラスの中の生徒の状況を見ることができるので、１学期末や２学期末など、その時その時の生徒の状況を見ていくものとして、本校としては使えているなということで行っている状況です。既存のものを使っています。
●福島県 郡山女子短大付属高等学校 教諭 堀田 雅明 先生
一連の改革の中で、例えば生徒指導の問題等の数が減ってきているというような実態として表れていることが多々あるかと思いますが、そういった改革の中でコース制の導入、０校時の実施といった学習活動と生徒指導、あるいは学校改革の中で、目に見える形で、例えば生徒の学習成績が向上してきているなど、あるいは、完成年度なので進路状況の結果は出ていないと思いますが、現行の生徒たちの学力の向上についての手ごたえというものが表れているのか、教えていただけますか。
[応答]
学力に関しては、はっきり今現在出ているものとしては、一学期の成績会議が終わったのですが、３年生に関しては全コース平均が７０点以上ということですごく高い状況で、教員側も少し驚く結果が出ている状況です。本校だけの定期テストなのではっきりは言えないところもあります。
Ｅコースの生徒に１，２年生はいません。３年生の２名しかいません。いれば開講するという状況なのですが、Ｅコースの生徒に関しては昨年からなのですが校外模試では県内でトップを取っています。また今は可能かどうかわかりませんが、目標東大というところで頑張っている状況です。
学習に関しては、やはり生徒たち自身が入学してきた段階で学習習慣が身についていない生徒が多かったのですが、ＳとＡコースでは毎日課外が出されてそれを毎日提出しなければならないということで、先輩がやっているから毎日学習することは当たり前だという雰囲気になってきているので、今後その積み重ねが進学や就職の結果として表れることを願っています。今のところ生徒たちは、キツイ子もいますけれどもやらなきゃダメだということで周りも全員やっているので、学習をやるような形、雰囲気になっています。