３．部会＜進路指導部会＞
相澤 一郎
本校は「新潟県の大学進学における全国水準との格差是正に寄与すること」を目的に設立され、開校当初より進学指導に力を入れてきた。その結果、現在では「規律ある進学校」として内外ともに一定の評価を得られるまでになった。
ここ数年、本校の国公立大学合格者数は現浪合わせて８０名以上となり、一昨年は開校以来初めて１００名を突破し１１７名に達した。また内容的にも、新潟大学医学部医学科に５年連続で現役合格を果たしているのをはじめ、旧帝大等の難関大学にも合格者が増えてきている。これらは本校に寄せられる期待に応えようと創意工夫をこらした教師の指導と生徒の日々の努力の賜である。
これらの実績から、新潟県が実施する「子どもたちの個を伸ばす教育を推進する事業」の一環として、「魅力ある私立高校づくり支援事業」の中から、過去１５年間（平成９年度から平成２３年度まで）の医学科進学者数が６３名（内現役３２名）と県内トップクラスの進学実績を残してきた本校が、「難関大への進学」の対象校に選ばれ、来年度から「医学科・難関大進学コース」の新設に向けて計画を進行中である。
１．本校の概況
（１）沿革と現状
本校は、新潟県の「大学進学の推進に寄与する」ため、また「２１世紀を担う頼もしい青年を育成する」ため、昭和５２年９月１２日に設立が認可され、昭和５３年４月に新潟第一高校第１期生が入学した。昭和６１年４月には新潟第一中学が併設され、県内初の中高一貫校として現在の学園の姿がほぼ完成した。建学の理念を「質実剛健、自重自治の気風を持った青年を育てる」とした上で、開校当初より「規律ある進学校」を標榜してきた。平成２０年９月には創立３０周年記念式典を挙行し、今年度の４月には、高校第３４期生３３４名、中学第２６期生１０２名が入学し、中高総勢で１３２０名が在籍する学園となっている。
（２）在籍とクラス編成
本校は中高一貫校なので、高校入学時に併設の新潟第一中学校から３クラス分、その他の中学校から５クラス分が入学し、計８クラスで一学年の定員が３２０名となっている。
中高一貫生は３クラスのまま、高校から入学した生徒と卒業まで混じらずに進級する。高校からの入学生は成績上位者から選抜された特別進学コース（特進クラス）が２クラスと進学コース（進学クラス）が３クラスに編成される。
高校２年生からは、中高一貫の３クラス、特進の２クラス、進学の３クラスがそれぞれ文系と理系に編成され、さらに高校３年生からはそれぞれ国公立大志望者向けの文Ⅰ・理Ⅰコースと私立大向けの文Ⅱ・理Ⅱコースに編成される。なお、高３の特進コースは文Ⅰ・理Ⅰのみである。
（３）進路実績
今春は卒業生数が３００人に減少したことと、県内の別の私立高校が併願入試を始めた学年だったため、成績上位者が前年に比べ入学時点から少なかったことからやや厳しい結果となったが、ここ数年の現役国公立大学合格者数は７０名程度を超えるようになり、特に昨春は１０２名に達した。内容的にも５年連続で新潟大学医学部医学科に現役で合格者を輩出しており、旧帝大等の難関大学にも合格者が増えてきている。また私立大学については早慶上理、MARCH、関西の難関大では同立関関といった有名大学に例年５０名程度の現役合格者を出している。
大学等進学率については、平成１９年度卒業生が８０％に達したが、近年では高い進路目標を実現しようとする生徒が増えているため、７０％台の後半で推移している。
２．本校の特徴ある取り組み
（１）学力アップを目指す取り組み
学力向上のための対策として中１から高３まで、「朝の小テスト」、「土曜講習」「長期休暇中の講習」が計画的に行われている。また高１・高２の校外模試の前にはプレ模試を実施し、弱点分野の把握と補強に努めている。さらに、高１・高２を対象とした夏の「学習合宿」で、受験勉強に対応できる持続力や集中力の涵養に努めている。高３を対象に６月から１２月まで放課後実施している「センター試験対策補習授業」、８月の第１週に実施している「夏期弱点補強講座」も成果を上げている。
（２）モチベーションアップを目指す取り組み
11月の第2週から第3週にかけて高校２年生対象の学部学科説明会を行っている。大学で教鞭をとられている先生方をお招きし、大学はどのような生徒を求めているか、それぞれの学部・学科ではどのようなことを学び、研究をするのか、などお話いただき、生徒はそれぞれの興味のある学部・学科の説明会に参加し、レポートを作成する。
高２・高３を対象とした「東北大学オープンキャンパスツアー」を７月に実施している。難関大学受験の気運を高める試みとして行っているが、例年高校２年生を中心に６０名～７０名の参加者がある。東北大学に在学する卒業生を各キャンパス毎に手配し、後輩達を案内したり、様々な質問に答えてもらったりしている。東北大学に合格する生徒は全員このオープンキャンパスツアーに参加した生徒達である。
（３）進路実現を目指す取り組み
高校１年生に対して、高校へ入学するとすぐに新入生研修を実施している。高校生活を充実したものとするために、教科ごとに学習の進め方や、予習→授業→復習のサイクルの重要性、学習習慣の確立についての指導を行う。また校長先生のお話や生活・進路等の指導を通して、本校の伝統や生徒としてのありかたを学び、それぞれが決意を新たにさせる。
高校１・２年生は、ベネッセコーポレーションの進路学習ノートを使いながら、ＬＨＲの時間を使って進路学習を計画的・体系的に進めている。文理選択や志望する学部・学科を選ぶ際の有力な指針となっている。
また、生徒個々の進路目標を実現させるため、高校３年生対象の年３回の志望校検討会も、進路指導にとって大きな役割を果たすものとして定着している。検討会では、担任とともに教科担当等の複数の教師により生徒の目標達成のための方策が検討され、この会で分析された内容は、三者面談等で活用されている。
さらに、高校３年生には進路指導主任による「全員面談」を行っている。進路情報の発信基地である進路指導室に生徒と学級担任に来てもらい、志望校や志望理由を確認するとともに、生徒の志望動向を知り、幅広く収集した進路情報を生徒個々の進路に合わせて的確に提供できる場となるように努めている。
（４）校外教育機関との連携
本校の学習指導の大きな特色のひとつは、受験指導で実績を持つ予備校、塾等との提携である。実績のある講師を招聘しての生徒向けの講習会として、河合塾とのセンター対策セミナー（高２・３）を実施している。また今年度からは初めての試みとして、駿台予備学校と連携しての夏期特別講習（高３）を計画している。
また、添削指導で定評のあるＺ会の添削問題を、本校の教員による事前・事後の授業でフォローする仕組みを構築して、学力増進講座（高１・２）として毎月指導することとしている。
３．今後計画されている取り組み
新潟県では、子どもたちの「個を伸ばす教育を推進する事業」の一貫として、「魅力ある私立高校づくり支援事業」を立ち上げることになった。この事業は「難関大への進学」、「国際人の育成」、「全国レベルのスポーツ強化」の３本の柱から構成され、事業を希望する高校からの計画書等を審査の上、決定される。
これを受けて本校では、過去１５年間で医学部医学科進学者６３名（内現役３２名）など、県内トップクラスの進学実績を踏まえ、「難関大への進学」事業に応募し、採用された。正式には平成２４年度から「医学科・難関大進学コース」を新設することとし計画を進めている。
なお、年度途中ではあるが今年度も県からの予算がつくので、現高校１年生で来年度以降「医学科・難関大進学コース」を希望する生徒を対象に「医学科・難関大進学コース対応講座」が開設される。
県の事業は、本校創設の理念でもある「生徒の進路希望の実現」と合致するものであり、今回のコース新設を機に、これまで以上に進学実績を上げたいと考えている。
＜質疑応答＞
学校法人石川高等学校（福島） 高橋 徹教諭
Q１「東北大学キャンパスツアーに参加した生徒の感想に、『１年生から部活一色で…』というものがありました。また、学校沿革を見ると、部活動も盛んであることが伺えます。中高一貫コースなどのさまざまなコースがあるようですが、どのコースの生徒も部活に参加しているのですか？」
A「本校では文武両道を掲げ、現在の校長が部活を推奨していることもあり、どのコースの生徒でも部活をやって、そこで文武両道を目指しています。」
Q２「各クラブによっては、練習試合や大会などの関係で土曜講座が受けられないこともあると思いますが、そういった場合に運動部の生徒に対して特別なフォローは行っていますか？」
A「土曜日に大会が入っている場合には普段の授業と同じように公欠となります。また、土曜講座があるので部の活動は土曜の午前は、（野球部の公式練習や他県への遠征などの場合は管理職の許可を得て実施することになるが）原則的にはその時間帯にはやらないということにしています。」
日本大学東北高等学校（福島） 高橋 敏行教諭
Q１「これらの取り組みは先生方の勤務時間の制約の中でなされているものなのか、それともサービス残業なのか教えて下さい。また、常勤の先生と非常勤の先生の比率についても教えてください。」
A「時間については、勤務時間は８：３０～１７：１５までになっています。時間外の分については手当で対応していますので、サービス残業ではありません。また、常勤の先生はおおよそ７０名程度、非常勤の先生は１５名程度となっています。最近は常勤の先生が多いので、放課後の指導等は常勤の教員で当たっています。土曜講座は非常勤の先生にも手伝っていただいています。」
Q２「進路指導主任面談については、相澤先生が３年生全員を担当されているとのことですが、どのようなタイミングで行われているかなどを教えてください。
A「朝８：００～８：３０の間、昼休み、放課後の時間を使って、時間外勤務にはなりますが、生徒の事情も考慮しながら面談を設定しています。」
Q３「全員面談に関連しまして、この面接は志望校検討会と関連して行っているのかなど、時期はいつ行っているのか教えてください。」
A「学級担任が４月当初に生徒と面談を行った上で、その後５月頃からスタートします。学年全部ということで人数が多いので、決められたこの時期までに終わらせるというのがなかなか出来ないが、例えば私立の専願が多いクラスだと指定校推薦の話をする関係もあるため時期を遅めにするなど、クラスの特性に応じながら時期を調整して行っています。」
八戸工業大学第二高等学校（青森） 清水 伸夫教諭
Q「３点質問があります。まず１つ目ですが、難関大学への進学者２桁台を標榜しているようですが、今春の卒業生の合格者数は振るわなかったようですが、その分析についてです。そして２つ目に、新入生研修がＡ隊・Ｂ隊と分かれているのはなぜか。そして３つ目に、３年生のセンター入試の直前期の指導についてはどうなっているかについてです。」
A「まず１つ目についてですが、合格者数の問題については、高校の入試制度の問題が大きかったです。県内の他の学校に成績上位者が流れてしまい、入学時点からの成績上位者が少なかった事が一つの原因として挙げられると思います。もう１つの原因としましては、中高一貫のクラスで、中学時の習熟度別学習を途中でやめてしまったことで、成績上位者が伸ばしきれなかったと分析しています。２つ目の、Ａ隊Ｂ隊に分かれる点については、単純に宿泊会場のキャパシティの問題になります。全員での宿泊が出来ないので、中日で全員をそろえて、校歌指導などの全体指導を実施しています。３つ目のセンター直前指導については、今回は資料を持っては来ませんでしたが、１１月末に３年生の期末考査が終わった後に、特別編成授業（特編１期）でセンター試験対策向けに授業を組み替えるようにしています。またセンターが終わると、特編２期として、二次対策に充てます。その他はセンター試験と同じ時間で行う模試や、実際に会場（新潟大学）を使った模試に参加させたりするなどをしています。
会津若松ザベリオ学園高等学校 岡村 晴規教諭
Q「難関国立大学のセンター試験・公民、地歴科目への対応について教えて下さい。理系の難関大学では、公民科目においては現代社会を不可とする所が多く、また地歴科目であってもＢ科目を必須としています。文系であっても４単位科目を２つ指定するなど、負担が大きくなっています。この負担については、どのように対応されるのか教えてください。」
A「センター試験の地歴・公民科目の件については、今の高校３年生が２年生の段階で分かっていたことなので、理系の生徒についてはそれまでは地理か政治経済を選ばせていたが、特に難関大学を選ぶ生徒は地理を選ぶよう指導しています。倫理＋政経は倫理を履修していないこともあり、選択するにはやはり負担が大きいですから。また文系生徒については、３年生センター試験対策の放課後の補習授業のスタートを倫理のみ２年の春休みからに早めて、３年時に履修する政経と合わせて選択できるようにしています。そのため、全員に４単位科目を準備しているのではありません。」
八戸工業大学第二高等学校（青森） 紀室 治教諭
Q 「校外教育機関との連携にはお金がかかりますが、それには県の支援事業からの予算が回ることはあるのでしょうか、あるいは別のお金で賄うのでしょうか。また、その支援事業で新しく設置されるコースは、現在も十分充実しているコースもある中で、どのようにアレンジしていくのか教えてください。」
A「校外教育機関との連携については、基本的には生徒からお金を徴収しています。ただ、全額生徒からだと負担が大きくなるので、教員研修の形を取って、学園からも補助をしています。これによって生徒の負担しやすい金額にしていますが、団体添削サービスについては、団体だと若干安くなるので、全額生徒に負担してもらっています。次に、新しいコースについては、中高一貫クラスのトップ層と、外から来た生徒（高入生）のトップ層で作ることになります。（今までは別だった）高入生と混ぜて設定しなおすのがポイントになります。」