３．部会＜教育課程部会＞
神 正剛
「新学習指導要領に即した本校の教育課程編成」
▼本校の概要
おはようございます。このたびの東日本大震災に際しまして、被災された方々の一日も早く一刻も早く復旧復興されることを心からお祈り申し上げます。私たちも遠い青森の地からでございますが、毎朝教職員、生徒一同毎朝お祈りをささげて行きたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは発表のほうに移らせていただきます。本日はパワーポイントの操作を本校の教務部長に行ってもらいます。それでは最初に本校の概要についてお知らせしていきたいと思います。本校は中学校・高等学校が普通科・英語科・音楽科3科から成る高等学校でございまして、今年で創立74年目を迎えるカトリックの学校であります。
高等学校の教育課程におきましては、学校教育目標を実現するために学習指導要領が改訂されるたびに、さまざまな事情を考慮して改訂を行ってきました。その中ではとりわけ、生徒の進路希望実現に対応した教育課程を念頭においてきたつもりです。現行の教育課程というものは現在行われているものであり、これは2003年度からのものでありございまして、このときは総合的な学習の時間が設定されました。また、その前年度からは完全週休二日制が実施され、あとは卒業に必要な習得単位数が７４単位に縮小されるなど、それまでの教育課程と比較して大きな変化が見られたものでございました。
また、中学校を２００８年度から本校は始めましたが、その教育課程についても来年度からは新課程として全面実施が予定されています。中高一貫校としてその特色が表に表れるような6か年を見通した教育課程をこれまでも検討してきました。今回の発表では次年度に向けた新しい教育課程の編成についての取組状況の概要を発表させていただきたいと思っております。
本校は1934年、カナダの聖母被昇天修道会から5人の修道女の方が青森に来られて設立の準備に入られたということから始まっております。そして、1937年に各種学校として青森技芸学院から始まりした。そのあと、さまざまありまして、戦後１９４６年に青森明の星高等女学校に組織が改変され、１９６８年には高等学校普通科のほかに音楽科と英語科が新設、２００８年には中学校が開校されるなど、今年で74年目を迎えております。
学園訓、校訓とも呼んでおりますが「正・浄・和」というものです。聖母マリア様を理想とし、福音の精神に従って正しく、浄く、和やかに生きる女性を育成することを目標としている学校であります。生徒数は現在中学校を合わせて310数名と小規模な学校となっております。進路の状況としては、進学者数が今春の卒業生９1名のうち国公立大学進学者７名、私立大学進学者が19名、就職者数は１８名等を数えております。
今回、新学習指導要領が全面改訂と言えるかどうかですけれども、私が知りえた範囲でその特徴あるいはポイントは何かということを見てみますと、まず、基本的な考え方としては「生きる力」は前とは変わらないと思います。「知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等のバランス重視」「豊かな心・健やかな体」を重視する。
また、教育課程の基本的な枠組みという観点からすると、74単位以上を設定、国語・数学・英語に共通必履修科目を設定する、理科科目履修の柔軟性を向上させている、週当たりの授業時数を標準30単位時間を超えて授業を行うことができる、そして小学校・中学校の義務教育段階における学習内容の確実な定着を図るための学習機会を設けることを推進していく「振り返り学習」といったものを明確にあげている学習指導要領であると考えています。
また、教育内容の主な改善事項として、（ア）言語活動の充実（イ）理数教育の充実（ウ）伝統や文化に関する教育の充実（エ）道徳教育の充実（オ）体験活動の充実（カ）外国語教育の充実（キ）職業に関する教科・科目の改善等が特徴として意識しなければならない、そして、こうしたものを意識した新学習指導要領であると考えております。
それを受けまして、本校の学校教育目標は何かを考えたら、法律に基づいていくというのは勿論でありますが、本校はカトリック学校でありますから、カトリック精神に基づいて「正・浄・和」の校訓のもとに次の時代を担う日本女性に相応しい豊かな教養と円満な人格の育成を目指し、義務教育段階の教育を基礎に３年間あるいは６年間の継続した指導によって生徒一人ひとりが持つ能力、才能を養って育てることを学校の目標として掲げております。
また、その基本方針として、各時代の必要な知識を授けて将来の知識を習得できるような能力をつける、個人の生活、職業生活、社会生活において積極的かつ健全な生活ができるように身体的・知的・道徳的能力を高める、最後に個人的・社会的道義心・生命と死に対する畏敬の念・神聖なものに対して心を開く姿勢・自分が信念を貫いて生きる姿勢を身につけるというような方針を掲げております。
以上、学校の教育目標を紹介させていただきましたが、これが本校なりの「生きる力」というもの、つまり生きる力とは何かを考えてみますと、一言で集約すれば時々刻々と変わる社会の変化に対応していく能力を身につけさせることに集約できると考えます。ただし、本校の場合は特にカトリック学校ということを忘れてはならないのであって、カトリック学校としての目的を具現化していかなければ、学校としての特徴あるいは伝統を守っていくことは困難であると考えますので、カトリック学校としての教育目標として「愛と奉仕の精神を持ち、神の前で敬虔で従順な女性」「他者を思いやり、ともに喜び感謝する心を持つ女性」「自らを律して自分と他者の善を望み、浄く正しく生きる女性」「グローバルな視野を持ち、品格のある聡明な女性」という4つの「プロファィル」を用意しております。
この「プロファィル」を教員だけが頭において毎日教育活動に励むのではなく、生徒のほうもこのことをもう少しわかりやすく評価項目をいくつかそれぞれ設けて、教師と生徒がそれを常に共有しながら学期ごとに教員側の評価と生徒の自己評価というものをすり合わせて、次の課題は何か、どうしたらいいのかという動きに入っていこうかということを二学期から始めようかと学校全体で考えているところです。
そのような背景を受けまして、教育課程のほうもそれらのことを意識しながらこれから組んでいくわけですが、現行の教育課程の中で今本校の場合はどのような学科・コースで進んでいるかをもう一度ご覧いただきたいと思います。
本校は高等学校の場合、普通科・英語科・音楽科があります。学年が上がるにしたがってそれぞれ少しずつ分かれていくわけでありますが、普通科の特進が三年生で文系と理系コースに分かれ、Iコミュニケーションコースや進学コースも二年生・三年生になるにしたがってより細かく分かれていきます。
Iコミュニケーションコースとは昔は就職コースと呼んでおりましたが、IはInformationのI、愛情のI、IdentityのI、といったいろんな意味を込めたIというつもりで名づけております。すなわち、就職コースだけというのではなく、進学もできるし、いまこういうふうな情報化社会になっておりますので、情報のことも専門家という立場ではなくて、普通の常識的な範囲の中でそれを授業の中に取りいれて学んで行ってもらおうかという教養コース的なコースとして名づけております。あとは英語科の学科です。
カリキュラムですが、特別進学コースは国公立大学進学に適したカリキュラムで構成しております。進学コースの場合は大学・短大進学、そしてIコミュニケーションコースは情報科目に特色を持たせているコースであり、それを活用して進路を就職・専門学校、そして進学を目指して指導しております。音楽科や英語科はともに専門科目に主眼を置く学科となっております。
その結果、たとえばこの春はどのような進路になっているかと言いますと、弘前大学、埼玉大学、北海道教育大学など国公立大学などの大学に現状のカリキュラムのもとで進学しております。もちろん、さきほどの学校目標のところでも申し上げましたけれども、進路だけのために立てているカリキュラムではありません。しかし、結果として生徒がそして保護者が生徒自身の希望したところに高校卒業後に進学していくことを喜んでくれれば、私たちも次もよりこういう風な進路が達成されるようにと思っているところでございます。それをどのような仕組みで教育課程に反映させていけばいいのかということを次年度に向けて考えている次第であります。
▼新課程への対応
現在の本校の教育課程について、次年度新課程のものを考えなければならないので、カリキュラム委員会で審議を重ねていくつもりでありましたけれども、昨年度の途中でありましたけれども一つのステップということで、さきほどのような学校の教育目標を達成させるためにもっと具体的にできることを積み上げていかねばならず、時間を待っている段階ではないだろうということで、普通科の中の特進コースとか英語科などに対して昨年度にまずは部分改訂をしようということになりました。
まず、普通科特進コースについては、やはり学力向上を目指すことが一つの現実的な目標になりますので、それをかなえるために長い間通常授業終了後の七時間目を平常講習という形で放課後講習という形で行ってきました。もちろん曜日は限定されている形でした。週三時間から四時間くらいでしょうか。
そういった中で、2006年に未履修問題が発生したとき、本校もそのときは強制的にカリキュラムを2007年度から部分改訂というよりも修正をしなければなりませんでした。その結果、今まで特進コースとしてよかれと思ってやっていたいろんな主要教科の時数が減ってしまいました。一時間でも減るということがものすごく大きな影響がありました。少なくなった時間をどのようにしたら有効に活用できるのか、その工夫が求められるような状況に陥ったわけです。
そのような状況で、昨年度の部分改訂は次のようにいたしました。特進コースについては平常講習を授業時間としてカウントするように教育課程表に増単という形で数字を盛り込んでいこうということで、まず単位数を増やしました。また、ちょうどいい機会であったので、特進コースではなく普通の進学コースは自動的に私立文系コースであったものを文系と理系という新たに進学コースの理系というものを設定しまして、将来看護系・医療系に進む生徒のために特化した形で理数系の教科を特進と混ぜないでやっていこうというふうに時数を設けました。また英語科については、より私立文系の進学がかなうようにと文系科目の単位数を増やしました。具体的には古典、日本史、世界史などを少しだけですけれども増やしました。
必履修科目は先に修正しており、身動きとれない状態下で修正しましたので早い学年で履修できるように部分改訂を行いました。結局この部分改訂のおかげで、総単位数が以前よりは次のようにかわりました。授業時数という意味で高等学校の1～3年生までの特進コースが4時間増え、英語科・音楽科でそれぞれ1～2時間増加することになりました。
あくまでも来年度全面改定をしなければいけないのですから、部分的ステップをこのようにやっておけば急に来年何もかもすべて時数も変わるということに比べれば、まずはワンステップになったのではないかなと。一つ変えるということに対しては免疫のようなものが少しできて来年変えやすくなったのではと思います。また、今度は枠組みはできたので、必要であればもう少し増やすとか、数字はそのままでも次に中身を修正・改良していくというふうに作業段階を精密に考えることができるようになったのではないかといま考えております。その結果、特進の国立文系の時間割を並び替えたものがありますが、ようやくこのような形になることができました。
中学校は時数が昨年度までは一週間31時間で実施していましたが、高校も増やしましたので中学校もそれにならって今年度は１時間だけ増やして一週間32時間でやっております。現行もこのような形で少し部分的に改訂が終わりまして、時数だけはある程度以前よりは増やした形になったのですが、来年度に向けての枠組みを少し変えただけでこれからが本当の新教育課程を組む作業にいよいよ入っていくことになります。
教育課程という本質を考えれば単位数だけ、数だけ表に入れれば済む問題ではもちろんなく、数字だけでは読み取れない、その数字の中にいったい何をどうやってどこに向けてやっていくのかという問いに誰もが答えられなければ、それを持ちながら授業に教育活動に向かうのでなければ、やはり教育課程を学校の中心的位置に据えるというものにはなりえないだろうということで、どのようにしていまこれから考えようとしている教育課程を意味あるものとしていくかという際に少し工夫をしなければいけないところが出てきております。
それはまず単位数が不足気味の教科がどうしても出てきます。その教科については今までと同じような気持ちで授業をしていたのではやはり目標を達成することができないということで、一人一人の先生方に教材をきちんと精選してもらう、もちろん、今の世の中いろんないいものがたくさんあり、迷ってしまうほど教材は溢れておりますので、その中にあっても目標を定めた中で精選してそれを組み立てていくということを、どのようにしてそれを示していくのか、どのように移行させていくのか。
もちろん関係してることですけれども、授業の中で使うシラバスというものをより充実させていかねばならないであろうと考えます。本校の場合はシラバスをただ冊子にして配っておりません。１学期ごとに各授業ごとの先生がプリントしたものを渡しております。そして、そのシラバスには今やっている授業の目標を箇条書きではありますが書いておりまして、一番先頭に空欄があって生徒がチェックできる欄を設けております。生徒もメリハリをつけてシラバスを活用できるように、教員は教員でそれを同じような目で見て授業の中で実際にシラバスをノートに張らせて、ノートをチェックする時にシラバスをチェックしているかどうかを見ながら、シラバスというものを両方向で活用していこうかと使っております。
また、授業評価というものをより充実させていかなければならないのではないかと思います。今回は１学期の最後に授業評価は終わってまして、生徒にアンケート用紙を配って担当教師は見ないという約束で書かしてますので、これから集計して二学期以降改善が必要なところは改善点を伝えていくという形で授業評価を行っておりますけれども、それをより充実させていくということが授業の充実につながっていきますので、これがよりいい教育課程に繋がっていくと思います。
▼今後の展望
(1)今後の課題
(ア)今後の課題として、単位数が不足気味ということで土曜日をどう活用していくのか現状でも土曜日は土曜講習という形でやっておりますけれども、土曜日はいろんな行事があったりあるいは模擬試験があったりで、時数がなかなか１単位分取れないのが現状です。その不足している補う意味で土曜日をどのように活用していくかということも工夫が必要なのではないかと思います。
また、教科の工夫ではありませんけれども、どうしても不足して成り立たないというのであれば最後の手段として45分8時間体制も次の新課程のカリキュラムを考えるにあたっては不可能なことではないのではないかと少し心においております。
(イ)の高大連携の可能性ということですが、可能性として考えなければならないのではないかと思っています。本校隣に明の星短期大学が併設されておりまして、現在も明の星短期大学に進学予定の生徒、主に高校３年生の生徒を対象として、明の星短期大学にもし入学したならば、必修科目というものを高校の段階で一単位だけではございますけれども勉強してもらっています。そういったことをもう少し拡大していけば、高校三年生もしくは高校二年生以下でも可能かもしれませんけれども、高校生の立場から短期大学で行っている授業を体験あるいは実際に単位取得まで持っていけば、高等学校のサイドからも教育課程というものの可能性が開けてくるのではないかと思います。
要するに、それぞれの生徒の進路目標というものに照らし合わせた場合、「私は明の星短期大学に進みたいので明の星高校に入りました」という生徒も実際いるわけであります。そういう生徒にとっては願ってもない前倒しで短期大学の授業を経験しながら、将来を見通した学習計画といったものがより明確に生徒個々人の中で育っていくのではないかという可能性も今考えたいと思っていたとこです。
また(ウ)として、総合的な学習の時間と特別活動の充実と書いておりますけれども、これはもう言うまでもなく、これを無駄にしてはいけない、これも大事な卒業要件の一つですので、教科・科目だけではなくてこうしたものを側面から行うことで最初に申し上げた学校目標というものが達成できるのですから、これは充実あるのみだと思っています。
最後の(エ)行事のスリム化と書いておきましたのは、授業時間数の確保という観点から、しかし行事はすべて削除削除となってくると学校全体の活性化にも影響が出てきかねないので、十分精査しながら考えなければいけない、十分旧課程表には関係あることだと考えております。
(2)2012年度中学校教育課程
2012年度から、中学校の授業時数ですがこれはさらに新課程の時数でありますけれども、中一は32時間これは現状のままですが、中二・中三は34時間に増えていると聞きます。
(3)2012年度高校入学生用教育課程
来年度入学してくる高校生の場合、１年先取り・前倒しで新課程が理数については始まりますので、理科についてどちらにするかが大変大きな中心的な課題の一つになっているように思われますが、本校の場合としては現時点としては必履修科目としては「科学と人間生活」「生物基礎」これで何とかおさめたい。全部の学科・コースではなくて、進学コース、Iコミュニケーションコースあたり、あるいは英語科、特進コースについてはやはり基礎を付した三科目でいくしかないかと今考えていることです。
(4)2013年度高校入学生用教育課程
2013年度からその他のすべての教科を巻き込んだ高校の新課程について、来年度に向けて、現在本校の場合は各教科主任に現状と比較しての要望がないかを調査中でございます。もちろん教科にすべてを押してしまうと収集つかなくなりますので、あらかじめ教科主任から上がってきたものをすり合わせる一つの材料にするだけであるという意味で打ち出しているわけでして、当然カリキュラム委員会でそれを一つの材料として扱ってまとめているということになろうかと思います。
来年度、新しい教育課程が多分できると思うのですが、できた後も今回これで当分安心ということはありえないわけでして、単年度見直しをしていかねばならないと考えてます。と言いますのは、これだけいろんなことを詰め込んだ教育課程ですから、十分考えたとは言え、実際にやってみてこういうような不具合が生じたとか、あるいは進路の面でこのような問題がやはり出て来たとか考えられますので、今まで本校の場合は単年度見直しというそこまでは行ったことはありませんでしたが、今回からはそういうことも最初から考えておいて少しずつ部分改訂も視野に入れて見直しを図っていきたい、そのつもりでの最初の教育課程を来年度作りたいと思います。
最後に、旧課程を数字だけ表に埋めて、それでさあ安心という気はまったくなく、数字の裏にあるその数字で「何ができるのか」「どういうふうに何を込めていく気ですか」という質問に対して、誰もが答えられるような、教育課程表を見ると、いろんな先生方が自分の教科についてはこういうふうにやるつもりなんだ、だからこうなっているんだという全体のバランスを込めて説明できるような表にしていきたいと考えてます。
以上で発表を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【質疑応答】
司会 ありがとうございました。では質疑応答に入ります。ただいまの研究発表に対し、ご意見ご質問等がありましたらお願いいたします。なおご発言の前に学校名・お名前を教えていただくようお願いします。発言の先生挙手いただきましたらマイクをお持ちします。
質疑 常盤木学園高等学校 高谷 将宏先生
宮城県の常盤木学園高校の高谷と申します。貴重なお話ありがとうございます。先行実施の理科についてお伺いしたいと思います。本校も一部のコースでは「科学と人間生活」「生物基礎」、または「基礎科目」３つということで考えています。私は数学の教員なので専門的ではないんですが、理科の先生方からは「科学と人間生活」を取り入れることに反発があって、主な反発は一つは教科書がないのではないかということ、教科書会社も「科学と人間生活」の教科書はできるだけ作りたくないから困るということ。もう一つは「科学と人間生活」は教科の特性を知る保護者からはこれを進学に取り入れるとかなりデメリットになるのではないかと強硬に言われたんですね。私は反論できないでいるんですが、もしそれについて何かお考えがあればお聞かせください。
応答 神先生
その質問に対しては、教務部長が理科の教師ですので、代わりにお答えしたいと思います。
今 卓也教務部長
それでは代わってお答えいたします。今の件ですけれども進学ということを考えた時に「科学と人間生活」はセンター試験の科目ではありませんし、内容的にも非常に不十分である、その後のつながりもないということもありますので、基本的に進学で理科を使うというという科目では設定していません。
そういう意味でたとえばIコミュニケーションコース、それから英語科、音楽科こちらのほうで「科学と人間生活」を設定いたしまして、そのほかにそれらのコースに関しては別に生物基礎二単位を設置していく予定でございます。もし受験でどうしてもたとえばセンター試験等で使用しますといった場合には、最終的にセンター試験では基礎を付したもの一科目での受験も可能ということになってますので、そちらのほうで対応可能であると考えております。
ただ、各大学がどのように今度受験科目を設定してくるかが大きな課題になってきますけれども、とりあえずはそういう意味で受験として使わないコースに関しては確認してます。それ以外の特進ではこれは完全にセンター試験、そのあとの大学の個別試験こちらのほうも考慮いたしまして、基礎を付したものは物理・化学・生物、こちらのほうの三教科を設定しております。一年生で物理と生物の基礎、二年生で化学の基礎、二年次同様に選択という形で基礎を付さないほうの「物理」または「生物」の選択で考えております。ただ時間数を二年生の段階で多く取れませんので、物理と生物選択に関しましては二年生と三年生の分割履修という形で考えております。
質疑 日大東北高等学校 小林 直喜先生
福島県の日大東北高校の小林と申します。私どももほぼ新教育課程は２４年度また２５年度以降の入学生に対して固まったものですから、我々の作業状況と照らし合わせながら聞かせていただきました。ありがとうございました。直接新教育課程とは関わらないのですけれども、明の星高校の独自の教育の部分について二点ほど質問させていただきます。
一点目は教育課程の背景の「プロファィル」の四つの目標をうかがいたいと思います。もう一度どのような目標であるのかを伺いたいと思います。つぎに学期ごとに生徒と教員が評価項目を設定してすり合わせるという授業評価においてどのような項目を設定しているのか、そしてさらにそのすり合わせを生徒と教員がどういうふうな形で行って新しい課題目標を設定しているのか、非常に素晴らしい取り組みだなということで、もう少し具体的にお聞かせ頂ければと思います。
二点目は英語科と特別進学コースの文系、Iコミュニケーションコース、進学コースの文系と英語科の相違をお聞かせください。特別進学コースの文系とIコミュニケーションコースは単位数の違いであるとか進学先の違いなどで分かるのですが、英語科が学校の中でどのような位置づけであるのかがわからなかったので、お聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。
応答 神先生
まず先ほどのプロファィルに関しましては、カトリック学校としてのアイデンティティを誰が教員になっても忘れてはいけないもの、それを実はたくさん項目がありましたが、先ほどは言葉だけで大変申し訳なかったのですが（ア）「愛と奉仕の精神を持ち、神の前で敬虔で従順な女性」（イ）「他者を思いやり、ともに喜び感謝する心を持つ女性」（ウ）「自らを律して自分と他者の善を望み、浄く正しく生きる女性」（エ）「グローバルな視野を持ち、品格のある聡明な女性」という4つの「プロファィル」という４つに絞り込んだわけです。
しかし、これを生徒にこのまま提示したところで生徒は何を思うのかを考えた場合、我々ですらこれをどのようにしたら生かせるのか、やはりいろんな意見があるだろうし曖昧なところが出てきてもいけませんから、もう少しわかりやすく具体的にこれをそれぞれの項目について4から5つの評価項目を今回設けたということです。実はまだ作業中でありまして、説明は職員会議では一回終わっておりますが二学期に最終版を説明して、それを生徒に配布して説明していく予定です。
もちろんその内容というものは、いろんな場面場面があります。学校では授業の場面とか行事の場面とかですね。たとえば本校の場合は「クリスマスのつどい」というものが１２月にあります。そうした行事にいろんな生徒が参加してその場面にたとえば（ア）に相当するようなクリスマス行事の前後にボランティア活動、「愛の実行」という昔からクラス単位で行っていたものを現在でのボランティア活動になるわけですが、そういったものを今回はクラス目標に応じたボランティア活動ができたかどうかという評価項目を（ア）や（イ）に関して設けていくわけです。項目が多いと収拾がつかなくなるので、わかりやすく、そしてまとめやすくということでアからエまで設けて、ワーキングチームという形で先生方が今考えてまとまりつつあるということです。
評価をやりっぱなしではなんとなく形が見えないままなんとなく進んでしまってなんだったんだろうということになりますので、常に評価・反省をしてこの項目はもういいから次に新しい項目に入れ替えようという話になっていけるように、評価項目に関しては必ず集計作業を入れております。
ただし、学校長のほうから教員側だけの評価ではやはりバランスが良くないであろうということで、あくまでもこれは生徒に対して行うものであるから、生徒がどういうつもりで自己評価できるのか、これに対して生徒の評価と教師の評価にギャップがある場合はそれこそ何か問題があるからだ、これが改善の一つのヒントになるであろうということで、両者からの評価を行っていかなければならないということで今まだ作業中といったところであります。
２つ目の質問に対しての回答ですが、本校の場合英語科に関して、現在は一年間の長期留学をするというのが、全員が行くわけではありませんが、希望すればまずクラスの半分以上の生徒が長期・３か月留学に出かけております。そして、もちろん帰国後また授業に戻りまして、三年間で卒業できるようにいろんな授業にも工夫をしております。
したがって、ずっと３年間学校に通って進学に備えるといった普通科の進学コースの文系と違って、英語科の文系というのは現地に行って生の英語を勉強してきて、他国の文化と自国に帰ってきての文化の違いとか国際文化の比較というものを実感しながら、それをもとにして大学進学する時に自分が本当にやりたいことを実現していくために残された高校在学の時間を集中的にたとえばAO入試だとか自己推薦だとか、もちろん一般入試にも向かわせますが、進学コースの文系コースとかなりの際立った差があり、同じ文系と呼ぶのは大学受験の枠組みで言っているだけで、教育コースと考えた場合は内容がかなり違うシステムになっているということで、同じ文系と呼ばせてもらっていました。
質疑 野原先生
大変真剣に取り組んでいらっしゃると感心しました。細かいことでございますが、今年度から５０分７時間で実施されていると聞きましたが、どのコース・クラスの生徒も集中力が持つのだろうかと心配になりました。実は時間数が足りないということについて、中教審でカリキュラム専門家である我孫子さんという先生と話をしたときに、彼も７時間は仕方がないだろう、しかしその際は４５分が適当という話をしていたこともあるのですが、それを５０分で７時間実際一学期間やってこられてどうだったかをお聞きしたいと思います。このあとのところで４５分８時間という考え方が出てきますが、８時間だったらなお４５分が適当だろうということと、同時にそれを実施しますと部活動の時間が減ってしまいますが、生徒からの反応はどのようなものがあるのかをお伺いしたいと思います。
応答 神先生
５０分７時間は今春から実施しておりますが、これは全クラスではなく特進コースだけです。特進コースについては昨年度まで平常講習７時間目を週に４時間程度実施しておりましたので、２時間程度増えたという感覚である程度体の慣れもありましたから、特段現時点で疲れて大変ということは出ておりません。
また、部活動との両立という点に関してですが、本校は特進コースの生徒も部活動は希望する生徒は参加してもらってもいいように伝統的になっています。場合によっては７時間目まで授業に出てしまっては確かに部活動の練習に影響を来たしている生徒はいます。したがって、その生徒に対しては部活動と勉強どちらを選ぶんですかとは言葉では聞いていませんけれども、優先事項としては特進コースにいるのであれば７時間目までは授業に出てください、模擬試験は必ず受けてください、学習合宿には参加してくださいと言ってはいますが、近年学習合宿に関しては大会と重なる場合、生徒一人でも欠けると大会に参加できない部活が多いですので大会に出て行ってもらってます。
結論としては、生徒自身また保護者の側で工夫していただいて、できるだけ７時間目までは普通に受講してもらうということで、今のところは大きな問題は出てきてはおりません。