３．部会＜教育課程部会＞
高谷 将宏
「生徒による授業評価を教育課程で活かす視点」
▼常磐木学園高等学校について
先生方、おはようございます。宮城県仙台市にあります、常盤木学園高等学校の教諭をしております高谷将宏と申します。本校は、仙台駅から徒歩１５分ほどのところにあります。仙台発盛岡行きの新幹線で駅を出てすぐ左手に、校舎が見えてまいります。そのような環境に位置しております。
今回は、震災の影響は本校もかなりありました。もともとの資料の１３ページの方に写真を載せてあります。印刷した資料も用意しましたが、そちらよりこちらのほうが見やすいと思いますので、こちらをごらんください。パワーポイントの方には写真も掲載しております。
この校舎なんですが、左側が１９７３年建築になります。右側が新しい校舎で、建てて７年ほどになります。左側の古い方の校舎の３階の５０％が現在、生徒立ち入り禁止で復旧工事。４階はほぼ１００％だめになりました。４階にコンピューター室がありまして、震災で全部机から落ちました。それだけならよかったんですが、ネックはスプリンクラーでした。それで、もうほとんどだめになってしまいました。火事はもちろん起きなかったんですが、スプリンクラーからの被害でパソコンが全部だめになるという状況で、今生徒には情報の授業はパソコン実習なしの状況でなんとか頑張ってもらっている状況です。
来月末には校舎の復旧工事は終わる予定なんですけれども、建設業者がなかなか、たぶん岩手の先生、福島の先生もそうだと思うんですが、確保できずに、大幅に工事は遅れております。復興費用は、理事長の話によると１億４千万ということで、かなりの負担になっております。
本校は昭和３年、１９２８年創立になります。創立の精神は、「自由と芸術」。この自由はfreeではなくliberty、芸術はこの昭和８年のときの校訓でしたので、外部からの圧力があったそうなんですが、自由な精神の元に芸術を大切にする生徒を育てようという創立の精神でできた学校です。設置学科は、普通科、定員は４３０名なんですが、現在の３年生は２１０名です。ここ４～５年で一気に、４００名を切る状態を我々も迎えるとは思っていなかったんですが、少子化の影響というのが顕著に現れて、現在３年生は２１０名、ただ１年生、２年生は１学年３００名ほどいますので、まだかろうじて大丈夫かなというところではあります。
もう一つ、音楽科を設置しています。こちらは男女共学になっています。音楽科の定員は約３０名となっております。本校の特色なんですが、部活動が盛んだということ、学校行事も豊富に用意してあります。多様なコース、進学コース、就職コースなど、様々なコースを用意して生徒を迎えています。進路先は人数のみ載せておきましたが、大学が１７５名、短大が３８名、看護医療系の専門学校２４名、就職３３名という状況になっております。
では、私のお話の本題の方に入にいっていきたいと思います。よろしくお願いします。
▼問題提起
今回の、私の問題提起は､現在先行課程ということで、来年度の先行実施に向けてみなさん様々な準備をしていることと思います。新しい課程を迎えるにあたって、その課程をどのように、何をもって、これは今うまくいっているか、これは改善が必要なのかとか、そういったことを評価するのかということをまず事前に決めておこうというのが今の本校の状態です。
先行実施の先ほどの理科の話とか、数学の話とかいろいろあるんですが、やってみて、うちは３０単位です。１日６時間の５日制ですので、３０単位でやっていますが、新課程を３０単位でっていうのはかなりキツイなぁと、ちょっと無理があるなというのが正直なところです。どのようなことで評価するのか、もちろん、学習指導要領にのっとっていないといけない。今回のネックは、例えば数学で言えば、今は数学演習という学校設定科目を設けています。ただ、県からの伝達方針によると新課程以降は、現在もそうなんですが、「なんとか演習」といものはだめですよと指摘を受けて、演習とつける学校設定科目はまず、やめてほしいと。じゃぁ、演習じゃなきゃいいのかということで、公立学校ではどう対応するのですかと聞いたところ、数学探究とか応用数学という名前でやってくれと。ただし、中身についても、公立高校はすべて、数学探究という名前に、今やっているような受験目的の数学演習を変えたとしても、中でどういうことをやっているか、全部提出を求められているそうなんです。私学の方にはまだ、そこまでしないけれども、何かあったときには、つつかれないように、しなければなりませんよと、お話を受けました。なので、学校設定科目の内容を保護者から指摘を受けたときにきちんと説明できるようにしておかないとならないというところで今、頭を悩ませています。
もちろん、本校もシラバスを作ったり、公開をしております。保護者から、私立高校のカリキュラムについて、保護者は私学文書課なんて存在はほとんど知らないようなので、私立にとってもクレームはまずに教育委員会に行くそうなんですね。教育委員会からは話を聞いて、学校の方には連絡するけども、そういったことはこれから徐々に増えてくると思うので、そういった対応も公立と同じようにしておいた方がいいですよというご助言をいただきました。そのあたりも、新課程ではきちんと対応しておかなければいけないと考えています。
もう一つ、評価としては目標とする進路に対応しているかどうか。結構、頭が痛いところなんですが、転入生、転校生、転出生に対応しているか。あとは、人件費の支出が教育予算内でなされているかどうか。生徒、教員ともに、授業がきちんと設定されているかどうか、生徒にとっては入試科目をもちろん受けているかが大事なんですけど、教員にとっても、芸術科目の教員が本校は多いものですから、その先生方に本来の美術であるとか、音楽であるとか、授業がだんだん減ってきて、授業がないという先生が増えてきました。そういった先生方に、苦肉の策として、総合学習などを、対応していただいているが、昨日の野原先生のお話からすると、ちょっと本来の姿ではないかなと頭を悩ませております。
内容においては、これが一番大事なのですが、生徒それぞれの進路達成目標、もしくは高等学校の教育目標というものに近づいているかということで教育課程を評価することを考えております。
私学ですので、その教育課程にはもちろん創立の精神が反映されていなければならない。この創立の精神を、例えば、総合学習、学校設定科目に反映させるんであればまだ、比較的楽に出来ると思うんですが、この創立の精神を教育課程に反映させる最も適切なものとすれば、日々の授業であると考えています。
数学を教える、国語を教える、いろんな教科、科目を教えるにあたって、創立の精神の基づいた授業展開ががなされてるいかどうかをきちんと提言していく必要がある。もちもん、教育方針についても同等です。
創立の精神や教育方針にのっとって、なされる授業で進路目標が達成されているか。一番大事なのは生徒が授業を受けて、「勉強している・学んでいる・成長している」達成感を感じられているかどうか。そういったような、教育課程をこれからどんどんどんどん、改良して作っていかなければと考えています。
▼授業を評価する方法
教育課程の具現化である授業をいかにチェックするか、大学の先生方がいろいろなご研究をされている中では、いくつかの項目がご覧のように挙げられています。テスト、面接、質問紙というようなペーパーテストによって教育成果がなされているかの分析。外部要素としては、模擬試験です。模擬試験に対応できるような力が授業でついているかどうか。教師の活動資料の使用方法について、教育課程に基づいてきちんと反映されているかどうか。あとは、これから私学として考えていかなければならないのは、この私立学校で学んだら、その地域社会にどん人材を輩出できるか。そういったものを、教育課程の中の授業で、きちんと具現化できているかどうか、チェックしていかなければならないとされています。
その授業なんですが、私たちの学校で今取り組んでいるのは、定期考査の出題内容とその成績ということで、やっぱり定期試験の問題をどのように、先生方でチェックされているかですね。教科では見ていると思うんですが、平均点の低い他の教科の授業のテスト問題を、違う教科の先生同士で見合って、これは内容的にどうかとか、どういう意図で出題されたのかを、他の教科の先生の質問に対してきちんと答えられるように問題作成されているかどうか。これに現在、取り組んでいるところです。
あとは、模擬試験の成績に授業を受けた結果が反映されているかどうか。上級学校への合格実績。資料の方にはですね、大学入学者選抜の実施要項の一部を掲載しておきましたが、ＡＯ入試、推薦入試で学力検査がだいぶ課されるようになってきました。本校の大学合格者の７割近くが、ＡＯ・推薦といった現状があります。今年の卒業生ですが、県立大学の宮城大の推薦入試で、英語の学力検査が今年度から課されるようになったとたん、「学力検査があるんだったら、私はＡＯ・推薦でちょっと挑戦するのをやめる」という状況がだいぶ出てきてしまいました。評定一本の推薦に今、頼らざるをえないという進路状況を、学力検査にも耐えられるようにどうやってもっていくかが、授業の一番の課題になっています。「筆記試験があると入試を避ける」という傾向を、本校はなんとか打破しないと、生き残りをかけていけないのではないのかという問題が挙げられています。
あとは、就職の内定実績ですね。就職内定者数も、どんどんどんどん、減ってきています。不思議なことに、文部科学省と、厚生労働省の宮城県の就職状況の内定率というのが違うんですね。どちらかは、宮城県は下から３番目で、もう一方は下から４番目というような、内定率の悪さになっています。省によって、内定率が違うのはどういうことなのかとすごい疑問はあるんですが、就職内定率、宮城県はどんどんどんどん悪くなっているので、その中で就職を希望している人たちに力をつけさせるために授業でなにをしていったらいいかも、課題になっています。
授業のチェックというところでは、研究授業、公開授業、授業分析ということで、本校はすべて授業は公開しております。事前に登録したりとか、事務室での申請なしに、全ての方々が、一般の方でも、いつでもご覧くださいと謳っております。ただ、それでもなかなか授業に外部の方が見学されることは少なくてですね、ここをもうちょっと開かれた学校にし、どんどんどんどんいろいろな意見を入れるにはどうしたらいいかも、課題の一つになっています。
今日の一番の趣旨は、この教育課程の具現化である授業をチェックするにはどうしたらよいか。そこはやっぱり、生徒、学習者の意見をどんどんどんどん参考にし、取り入れていこうということで、生徒による、授業評価を実施しております。今年度で、実施して６年になります。
▼「生徒による授業評価」の背景
生徒の声を授業に取り入れて、それをどうやって反映させて授業を改善していくかということを論じていきたいと考えています。この生徒による、授業評価の背景なんでけども、私たちもこれをやらざる得ない状況になっております。高等学校の設置基準の一部改正に伴って、学校評価をしなければならないと、その学校評価の中には様々な評価がありますが、その一つとして、生徒による授業評価を取り入れることを考える必要があると謳われています。
生徒による授業評価をやるときに、一番多かったのは先生方からの反対でした。その先生方に、なんでやんなきゃいけないかという説得材料の一つとして、こういったものを持ち出したりして、説明したんですが、なかなかしっくりは来ていただけなかったという状況があります。
この生徒による授業評価なんですが、今一番盛んなのは東京都ではないかと感じています。私立高校は各学校で以前から、かなり力を入れて授業評価をされてたと思うんですが、まず東京都の場合はですね、平成１４年度に一部の学校で試行という形で取り入れられました。平成１６年度からはすべての都立高校で完全実施しております。あとは、地方の例とすると、高知県では、平成１０年度から土佐の教育改革と称して、もともと私立高校の方が強いんですね、公立高校のテコ入れをしようということで、平成１０年度から全県で生徒による授業評価を取り入れております。この生徒による授業評価なんですが、けっこう、受け入れられやすい背景もあります。神奈川県の高教組の先生方もですね、生徒が教職員の授業を評価すること自体は否定できないし、否定すべきものでもないと指摘しています。
あとは、私たちの学校で様々な問題のうちの一つとして教員の年齢の格差ですね。３０代の教員はかろうじて多いんですけど、本校、専任教諭５４名いるうち、２０代は男女一人ずつしかいないんですね。３０代が多く、４０代が少なくといった状況で、ベテランの先生から若い先生への教育技術、教育理念、本校の伝統をどのようにうまく引き継いでいったらいいのかがものすごい問題になっています。
その技術的な問題として、授業評価をひとつのきっかけにして、先生方の世代間交流であるとか、授業技術、授業方法のコミュニケーションをより活発化できればという願いも持っています。
今回、新潟県を含む東北７県に主に普通高校、普通科を設置している高校にアンケート調査を行っております。確か、９８校近くあったと思うんですが、５８校からご回答を頂きまして、生徒による授業評価を取り入れているというのは５８校中、３５校でした。取り入れていないという学校の中にも、今後取り入れたいというところがけっこう多く、だんだんだんだんこの生徒による授業評価というものが私立学校においてもスタンダードになっていくのではないかと思われます。ただ、問題点は、この生徒による授業評価をとりいれている学校のうち、１３校においては、本校もそのうちの一つなんですが、これを取り入れたからといって、学力に変化があると考えていないという先生方がやはり多いです。私も、これはけっこう大きな問題だと思っていて、授業を改善して、授業が分かりやすくなったから、それがじゃぁ、学力の伸びにつながるかといったら、そうでもないんですね。そこをですね、どうやってクリアしていったらいいかなというところが非常に頭をかかえているところです。
▼教員の感じている利点と課題
利点としては、先生方のコミュニケーションが活発化すること、あとは私たち授業をしていてがここ弱いな、と思うところは生徒もここまずいなと感じているので、それが改めて確認できるといういこと、あとは、特に若い先生が多いと思うんですが、何が悪いのか分からない先生に対してはこういうところだよ、と根拠をもって指摘することができるというところ。課題としては、評価が良い、悪いとなって、評価がよかったら先生方はそこで満足してしまって、停滞してしまう。あとは、評価が悪い先生にとっては、数値だけだと、何が悪くて、何をどうしたらよいか、わからない。悩みだけが残ってしまうというところが、課題になっています。あとは、一番多いのは、やっぱり生徒にいい評価をうけたいということで、生徒の目線に合わせてしまう。もしくは、評価を高くしてもらうために、ハードルを下げてしまう。結果、何も残らない状況になってしまうのが一番まずい。
もう一つの課題としては、これによって、先生方のコミュニケーションを活発化したいというのがあったんですが、評価が低い先生、もしくは思った以上に伸びなかった先生は、その結果をほかの先生に見せたがりません。結局一人で悩んでしまいます。そういった先生方にどうやって声をかけて、コミュニケーションの輪の中に入れておくかはお互いの評価を教員同士は知らないわけですから、そこは管理職の先生方に頼らざるを得ない。その評価の結果をそのままにしておくのではなく、どう、その先生にアプローチしていくかが、非常にネックになっています。東北７県の管理職先生方に行ったアンケートによると、意外と管理職の先生方の専門の教科でない先生にも、生徒の対応の仕方はそんなに難しくなくアドバイス出来るよとご回答いただいたので、その辺は大変ありがたいと思っています。評価の低い先生を拾い上げて、そこを伸ばすといったことをどんどんどんどん取り入れてほしいなと感じています。
▼本校における「生徒による授業評価」の実施状況
本校は、どのようにして生徒による授業評価をやっているかというと、実施回数は年２回になります。本校は2期制です。各学期の中間試験の最終日に行います。今回は、震災の関係で、ちょうど明日、終業式なんですが、今年度の1回目が行われます。担当しているのは、研修担当教員、法人の人事課長です。評価項目は、共通した項目で①～⑦まで。この評価項目については、先生方にこういった項目でやるということを、一応同意をいただいて、文言は徐々に変えてきましたが、６年が経ちました。生徒による授業評価をやるときに、生徒から例えば、評価する先生がこのとき、監督として、問題用紙を配るのでは困るので、ぜんぜん授業を受けてない先生。直接、自分が授業を受けていない教員が、生徒による授業評価のアンケートの監督をするといったルールを作ってやっております。
評価尺度は４段階。よい～わるいまで。自由記述は、記名式で行っています。ここは、だいぶ議論があったんですが、やっぱり無記名だと心臓をえぐるような発言も結構あってですね、かなり落ち込む先生もいて、それはまずいだろうっていうことで、評価するんだったら、お互い責任をもとうということで、自由記述は記名式にしました。でも、やっぱり生徒からは無記名にしてほしいという意見が根強いです。
評価後の扱いなんですが、校長、副校長、教頭、教科主任で評価をチェックします。評価が、その該当教科の中で、著しく低い場合、一番低い場合ということではなくて、教科の平均点よりもこれは明らかに低いといったような場合には、例えば、授業見学、研修の指示など、具体的に、管理職の先生方が一応見学をして、まずいところを、改善するところを指摘するとかをやっております。
▼「生徒による授業評価」への疑問の例
これをやってみて、それでも悩んでいることはあります。一つは、教育課程の設定目的に合わない生徒が出てきます。二年生からは進学コース、国公立を目指すコースですとか、さまざまに分かれますが、ただ、完全な希望制ですので、国公立を目指すコースに本来その学力がない生徒、もちろんその生徒を伸ばさなければならないんですが、その設定目標と著しく乖離している生徒も入ってきます。そういった生徒の層をどのように、授業の目標はこうだからこれについて、評価しろといってもですね、なかなかギャップが生じるんですね。そういった層の生徒をどうやって吸収するかが、悩みの一つになっています。
あとは、授業を受ける目的の違い、受験に必要だから、授業をとってるっていう生徒は一生懸命やりますが、他の教科を選択するには、まだこの教科のほうがいいとか、もう合格してしまったから、本当はこの教科必要ないんだけど受けなきゃいけないから受けてるといった授業を受ける目的のちがいにどう対応したらいいか。
あとは、生徒による授業評価の項目を先ほど７つ挙げましたが、その評価項目では挙げられない、探すことができない改善点をどうやって把握するか。
最後のほうになるんですが、ここがけっこう問題ですね。先生方によって評価の高い授業があります。その評価の高い授業を見に行くが、これがなぜ、高いのかわからないっていうのがあります。露骨にそれを指摘するわけにもいきませんし、どうしたもんかなと・・・。この評価の高い授業が、よい授業とは限りません。分かりやすい授業が、出来るようになる授業とも限らないのと一緒で、評価が高いといったことが、果たしていい授業なのかどうかというのは非常に疑問があります。評価の低い授業をされる先生の方が、結果として大学進学の力をつけているとか、そういったこともあります。なので、生徒による授業評価っていうのは、非常に難しいんですね。ただ、何かのよりどころを設けなければならないので、教育課程のチェックとして、これを取り上げて、今本校では行っています。それと、教科・科目の違いを克服するには、あ、これちょっとしゃべり方が難しいんですけど、教材研究にものすごい時間をかけなければいけない教科と、今日は突発的に授業変更があって、じゃぁここでこういうことするよということで対応できる教科っていうのがやっぱり存在するような気がするんですね。
教科・科目のちがいを授業評価で、一律に評価するっていうのはかなり無理があるんじゃないかなと感じています。
▼解決策として
解決策として、生徒に授業評価を求めているんだから、その生徒に授業評価のあり方とか、何をあなたがた求めているのとか、どんなことを授業で評価したいのかといったことを、聞いてみようということをしてみました。実際、生徒一人、一人にインタビューをしてその内容を分析しました。この分析方法は、私たち携帯電話を使うときによく使う言葉っていうのは、よく先に、もうどんどんどんどん出てくるようになってますよね。いろんな先生方の携帯電話を勝手にいじったりするとですね、この先生はどういうコミュニケーションとってるかということがよくわかってしまうような、恐ろしい機能があるんですが、そういった機能だと考えていただければかまいません。
それによって、生徒がどのようなことを望んでいるのかということを私の授業を例にして、分析してみました。３０名の生徒で、その生徒層はこの年は、山形大学とか、宮城大学とか国公立の大学に現役合格する層から、出願すれば即合格といった専修学校まで、ごちゃまぜになっている選択授業です。学校によっては、本校もですけど、いろんな条件によって学力の非常に高い層から、低い層まで一緒にしなければ、授業が成立できないといった授業もありますので、そういった授業であなたがた何を求めているのかということを聞いてみました。
▼テキスト分析の結果とその階層化
ここに、細かく載せたんですが、これはお手元の冊子の１６ページの上のほうにあります。生徒のインタビュー結果を全部単語ごとに、よく使われている言葉で、どの言葉とどの言葉がよく使われているのかを、グループ分けをしました。そうすると、おもしろいことが分かって、昨日の野原先生のご講演の中にもあったんですが、授業中生徒の声が聞こえてこないで、教員の声ばっかりの声が聞こえてくる。私の分析を改めて見るとですね、真ん中の若干上のほうに、「あたる」・「あてる」という言葉があるんですね。数学の授業で、演習の授業なので、こちらが一方的に説明して終わるといったことも多かったんでうすが、実は生徒の方は「あてて欲しい」とか、「あたりたい」と強く思っているということがわかりました。
この、｢あたる｣・｢あてる｣という言葉が、どのような文章の中で使われているのかをチェックするとですね、やっぱり、生徒は授業に自分たちで参加したいという意識が非常に強くてですね、やっぱり出来ると嬉しいですし、アピールしたいし、見てほしいんだというのが、すごく潜在的にあるんだっていいうのが分かりました。
あと、この中で、わかりやすいのは、「大切」「黄色」「赤」「しろ」というのは、左のほうにありますが、これ何かなと思って見てみたら、「大事なとこは白だけじゃなくて、黄色とか赤とか、目立つように書いてくれ。ただし、先生によって、黄色が大事なのか、赤が大事なのかちがうので、そこをなんとかしてくれないか」とあって、それぐらい自分で判断しなさいよと思いますが、けっこう板書に対しても、うちは女子校なので、特に女性はノートをキレイに書くことが大好きなんですよ。
あと、もう一つだけ、例を挙げるとすると。「集中」「出来る」というのが左下にあるんですが、やっぱり集中して解きたいから、そういう時間を設けてほしいとか、出来るようになりたい、そのために集中したいという言葉がどんどんどんどん出てきて、授業に生徒はやっぱりこういうことを求めているんだということを改めて確認できました。
それを、使っていることばの種類で分けると、生徒の要望として授業技術に求める視点、授業の雰囲気に求める視点、学習者としての学びにおける視点、自分にとってその授業がどういう損得があるのかという視点、この４つにわけられました。
そうすると、一番問題なのは、私たちが生徒による授業評価として、評価してるのはこの授業技術に求める視点のみが中心になっていて、授業の雰囲気にどのようなことを求めているか、生徒がどんな学びを必要としているかは授業評価だけでは分からないんですね。
ただ、意外と生徒はわれわれがすごく神経使ったりする、授業技術よりも、そのほかの雰囲気とか、学び方とかにすごい欲望をもっていて、そこを満足させられてるかどうかが、授業評価では反映できていないというところにすごくジレンマをもっているようです。
▼改善に向けて
このインタビューを受けて、改善点を考えました。ただ、そのときにも生徒の評価なので、全部合わせるわけにはいかない。創立の精神、教育方針の目標がありますので、ゆずれるところと、ゆずれないところはきちんと抑えておかないと、すべて生徒に合わせてしまうということになってしまいますので、教科・科目の目標は絶対に損なわない、レベルを下げない、生徒に迎合しない、生徒の進路目標維持。生徒に嫌われてもいいからあなた方の目標を達成するようにがんばるよ、というのは確認しました。その上で、生徒が求めているような一人一人、個別に対応してほしい。これは、進学塾の個別対応ではなくて、やっぱり授業中に気にしてほしい、一人ひとり最低1回はその先生に声をかけてほしいとか、私はあなたを気にしているんだよというアプローチが欲しいんだっていうのを、授業で実現するにはどうしたらいいか、考えました。
あとは、オリジナルプリントの導入ということで。生徒は書くのが遅いんですよ。板書を写す時間は非常にかかります。ただ、書かせて、考えさせる授業でどっちが大事かというと、やっぱり考えさせる授業なので。１年生は、出来るだけ考えさせることを中心にし、３年生になったら、書くスピードと考えるスピードがつくような形で。徐々に徐々に、内容を詳しいものから、簡単なものにということで、学年で段階的に下げてきて対応できるようなプリント学習を中心にしました。これ、事前の準備がものすごいかかりますが、授業を非常に考えさせるものにするという点では、その時間を確保できるようになりました。
あとは、授業目標の再設定ということで、この授業はなんのために、何を目標としているのかは、常に生徒にアピールしていかないと、教員も生徒もただ単に進路を消化する、試験の範囲を終わらせることだけで、終わってしまいますので、それは本意ではありません。お互いにこの授業で何をするのかを常に確認するようなことを取り入れています。
▼教育課程の具現化たる授業のチェックのために
生徒による授業評価を取り入れるためには、その利点と課題を知る必要があります。利点としては、先ほど述べましたが、課題のほうはまだまだいっぱいあります。高い評価が、いい授業かは限らないということとですね、あとは卒業生にアンケートをとってみると、その時はこの授業は大嫌いだったけど、５年後、１０年後になると、あの授業こんなによかったんだと、改めて気づいたと生徒が言っています。昨日の野原先生のお話で、コアカリキュラムはあとになってあれ楽しかったというように、本当に今の生徒もそうで、その時、われわれが悪い評価を受けて落ち込んでいたとしても、５年後になると、振り返ったら、あの授業よかったっていうのがあるので、そのとき評価が低いから、悪い授業だとはなかなか言えないということが分かりました。
管理職の先生方にぜひお願いしたいのは、われわれの授業に対しての管理職からのアドバイスをいただくのは、中学校では約半数なんですね、高校では直接管理職にアドバイスをいただくのは２５％に減ってしまいます。高校になればなるほど減っているという現状があります。ここをなんとか、授業評価をする際にはわれわれも生徒とほとんど同じで、よく思われたい、気にしてほしいという希望もありますので、こういうところを酌みいれてほしいなと思います。
生徒による授業評価を実施して、一番まずいのは、いい評価、悪い評価どちらでもかまわないと思うんですが、何もかわらないというのがまずいんですね。やっても意味がないんだったら、生徒はだんだんだんだん、いい加減になります。そりゃぁ、そうだと思うんですね。評価を生徒から受けてもらったら、「受けた結果を生徒にどうフィードバックをするか」、「私は今回こういうところがよかったんだけど、もっとよくするには、どうしたらいいかとか、ここ悪くて、自分ではいいと思ったんだけど、何でだめなのかな」といったようなコミュニケーションが、この評価を受けた後、取れているかどうかが、すごく大事になります。これがないとですね、生徒もだんだんだんだん、生徒も全部「よい」とか「わるい」に丸つけたりとか、気持ちはよくわかりますね。生徒が授業を評価するというのは、将来のゆくゆくの市民性の育成にもつながると思います。評価っていうのは、責任が伴います。その責任感っていうのを、生徒自身も教員と一緒に授業作っていく視点が残りますので、ぜひこれは受けっぱなし、やりっぱなしではなくて、模擬試験といっしょだと思うんですけど、やった結果を、生徒と共にどう共有して、生徒をどう導いていったらいいかを受け終わってから取り入れていってほしいなと思います。
▼まとめ
教育課程の評価ということで、生徒による授業評価で授業を評価していっていこうよ、というときにやっぱり自分たちの教育評価っていうのが、学校の創立の精神元づかなければならないので、安易に迎合するわけにはいきません。自分たちの学校は、その授業に何を求めていて、何を生徒に評価してほしいのかというところをちゃんと取り入れた上で、生徒による授業評価を授業のチェック。その、授業一つ一つの積み重ねで、教育課程のチェックというものに取り入れていければいいかなと考えております。