甲子園。高校野球の最高峰。日本一。どれだけ高い山なのか。これまで聖光学院は夏20回、春7回甲子園に出場してきました。積み重ねてきた勝利の数は31。
斎藤監督とコンビを組み始めた当時、死ぬまでに1回は甲子園に行きたいな、と話していたのに、それから26年。こんなにも甲子園に行けているなんて信じられないことです。そして、今甲子園で勝つということがいかに難しい事なのか、日本一という最高峰の頂きに到達するのがどれだけ大変なのか痛切に感じます。
抽選会が終わってから、時間が十分にあったので山梨学院を徹底的に分析してきました。しかし、見れば見るほど力のあるチームだなと感じていました。そこにどうやって対峙していくか。準備はできていました。
そして迎えた山梨学院戦。一言で言えば力の差がそのまま点差に出た、ということになります。力負け。でも、目に見える部分はそうであっても野球はひっくり返すことができる。そうやってこれまで甲子園での勝利を重ねてきたわけであり、それはつまり、そこの差を埋めるプラスアルファを試合で出させるように導いてやることができなかった、ということです。この敗戦は選手の力の差ではなく、我々の力のなさであったということです。
選手達は紆余曲折いろいろあった中で、ひたすら前を向き、日本一を獲るのだと努力を重ねてきました。まだまだ未熟だった部分も、凄く成長してきました。特に精神面。ピンチに弱いとか、ネガティブだとか、そういうことではなく、一つ一つの身の回りのことに関して起きる気づき力、行動力が凄くついてきた。もともとグランドでは直向きに野球をやる子達だったのですが、普段の生活の部分、日常というところで甘さが見えることが多かった。春の選抜の時には、とにかく毎日お説教の嵐。甲子園というのは本当に多くの人のご支援があって成り立つものですから、そういうことをちゃんと分かって行動して欲しいんですね。
身近なことを挙げれば、甲子園期間中の洗濯は業者さんに委託しているのですが、業者さんからこんな話しを頂きました。その業者さんは今年は甲子園出場校のうち15校くらいの洗濯の委託を受けているそうなんですが、とにかく聖光学院さんがNo.1です、と。どこもそうだけど自分の洗濯物をさっさと持っていくけど、他の人のものは知らぬ存ぜぬだと。だからいつまでも昨日の洗濯物がグチャグチャになって残っていたり、廊下が汚かったりするんです、と。そして業者さんからこんな写真が送られてきました。
こんなに整理整頓ができている学校は他にないです!と。我々はそんなところが実は一番嬉しい。口で感謝・感謝と言っても、そこに行動が伴っていなければ意味はないですから。
だからグランドでいつも完璧な試合ができるかどうか分からない。昨日の試合はうまく行かなかった。もっとやれることがあったはずです。成功か失敗かといったら失敗。でも、この子達は本当に成長してくれました。洗濯の件はほんの一例ですが、いろいろな面において、他者を気遣い、どうやったら仲間を生かすことができるか、そのために自分をどうやって生かしていけばいいか。そんなことを一人ひとりが考えて、本当にいい顔でこの夏を過ごしてくれました。
負けたことは悔しい。でももっと悔しいのは、この子達との歩みが終わってしまうこと。「成長なくして成功なし」とは私がよく言う言葉ですが、この子達との歩みが終わってしまうことが心の底から寂しい、そう思わせてくれるまでに成長してくれた選手たち。
62期生、竹内世代。秋季東北大会優勝、明治神宮大会出場、春の選抜ベスト8、5試合中4試合を逆転しての夏県大会4連覇、そして夏の甲子園出場。数々の偉業を成し遂げ、新しい世代にそのバトンを引き継ぎました。レギュラーだった猪俣陽向はじめ、2年生が聖光学院の伝統を受け継ぎ、早速明日から始動となります。
最後に第107回全国高等学校野球選手権大会出場に際し、本当に多くの方々よりご支援を賜りました。この場をお借りしまして、心より御礼を申し上げます。今後も聖光学院野球部を応援して頂けると幸いです。本当にありがとうございました。