新井秀校長説教集90~誓うということ~

校長

2023年5月11日(木)
朝 の 説 教
- 誓うということ -   『マタイ』5:33~37

今日は「誓うということ」という題で話をします。我々は誰に対して誓うのでしょうか?それは第一に自分に対して誓う、第二に他人に対して誓う、第三に神様に対して誓う、の三つに分けられます。

第一の「自分に対して誓う」です。良く「一年の計は元旦にあり」と言います。今年こそあれをやろう、これを実行しようなどと計画するのですが、意志の弱い私など殆ど三日坊主です。ラグビーの有名な選手だった大畑大介さんは自分への誓いを誠実に履行した人でした。新聞記事を少し読みます。「ラグビーをやっていた父親の影響を受け、小学校3年からラグビーを始めました。でも中学時代は地区の代表にさえ選ばれませんでしたが、東海大仰星高への入学をきっかけに目標を立てて頑張っていこうと思っていました。そして入学早々真っ白い上履きの右足に「全国制覇」、左足に「高校日本代表」とマジックで書いたのです。すると生徒たちから「お前にはできへん!」「消せ」と言われ、先生方からは「上履きに落書きなどするな」と怒られました。私は担任だった土井崇司先生に、「先生、これは高校3年間の最大の目標で、自分で誓いを立てて頑張る方法として目標を明確にしたかったのです」と伝えました。するとラグビー部の顧問でもあった土井先生は「そこまで言うんならやってみろ。その代わり、お前の気持ちが薄れたり、情熱がなくなったりしたらその時は消せよと怒られました」。大畑さんは自分との約束を忠実に守り、チームを花園に導き、京都産業大学や神戸製鋼でプレーし、テストマッチ(国代表同士の試合)で何と69トライという大記録を打ち立てました。参考までにテストマッチに最も多く出場したのは、我が福島県出身の大野均さんで、その数98試合!断トツです!私たちも大畑さんや大野さんに負けず、自分に誓った目標に向けて誠実に努力する者でありたいと思います。

第二は人に対する誓い・約束です。これは人間の威信がかかっています。不履行すれば信用はがた落ち、もしその約束にお金の問題でも絡めば、時には裁判に訴えられ警察に捕まることにも発展します。

太宰治の『走れメロス』は友人同士の誓いを命を懸けて守る感動的な話です。16歳で結婚する妹の花嫁道具を買いにきたメロスは、街の異様な静けさに気付きます。この町の王は人が全く信用できず、自分の妻や子供や家来を次々と殺している暴君だと知りました。正義感の強いメロスは我慢がならず、王に文句を言おうと城に入りますが、すぐに捕まり激しい口論の後、王に死刑を言い渡されます。妹の結婚式を控えたメロスは親友のセリヌンティウスに人質になってもらい、三日後には必ず戻ると約束して村にとって返します。このことは何も言わず、急いで妹の結婚式を済ませたメロスは元来た40キロの道を走り出します。でも大雨で濁流となった川に阻まれたり、王が派遣した山賊に行く手を阻まれたり、疲労で眠りこけてしまったりします。でも水の音にやっと目を覚まし、その水を口に含んで気を取り直し、また必死に走り続けます。遂に間一髪で約束に間に合いました。メロスと親友セリヌンティウスはお互いが一度だけでも相手への信頼を失って疑ったこと正直に告白し合い、一発ずつ互いを殴り、強く抱きしめ合いました。二人の誓いを守る姿勢・友情に心打たれた王は心を入れかえます。人々は大喜び、「王様万歳!王様万歳1」と叫ぶという物語です。人との約束・誓いにも我々は誠実でなければならないことを教えてくれる小説です。

第三は神様・イエス様に対する誓いです。イエス様は自分に従ってこようとする弟子たちや群衆を前に、このことを一番話したかった筈です。でも旧約聖書を見れば一目瞭然、人々は常に神様との約束を忘れ自分勝手な行動に明け暮れました。神の怒りに合うと一時は反省するものの長続きはしません。栄華を極めたソロモン王も最初は謙遜に神様の声に耳を傾けましたが、自分の力が強大になるに従い神から離れ、神の怒りを買い、国が北のイスラエルと南のユダに分裂するという悲劇を生んでしまいました。イエス様の弟子たちも、「たとえどんなことがあっても先生の後に付いて参ります」と約束したのに、イエス様が捕らえられれば蜘蛛の子を散らすように、先生イエスを見放して逃げ出してしまいました。

人間は弱いのです。自分が可愛いのです。自分勝手なのです。誓いや約束など平気で破るのです。でも神様・イエス様は、「お前たちなど信用できない」と見捨てられているのではありません。そんな私たちに尚も、「あなたは高価で尊い、わたしはあなたを愛している」と言ってくださるお方なのです。

私たちができるのは、喘ぎ喘ぎでも休み休みでも、誠実に神様・イエス様の後に付いて行くことであります。イエス様はそのことを今日も私たちに求めておられるのであります。